半導体製造の国内回帰(Reshoring)とは、かつて製造コストや人材などの理由でアジアに移転した半導体製造拠点を、安全保障・サプライチェーン強靭化の観点から自国または友好国に戻す動向を指す。2020〜2021年の新型コロナウイルスによる半導体不足と、台湾海峡有事への懸念が「半導体は国家安全保障の根幹」という認識を西側先進国に広め、米国CHIPS法・EU半導体法・日本の半導体戦略など大規模な補助金政策を伴う国際的なトレンドとなっている。
主要なリショアリングプロジェクトとして、①TSMCアリゾナ工場(N4/N3プロセス、400億ドル投資、2024〜2026年稼働予定)、②TSMCJapan(JASM熊本第1工場:N12/N16、2024年稼働;熊本第2工場:N6/N5、2027年予定)、③Intel Fab 52/62(アリゾナ、Intel 18A向け)、④Samsung Taylor工場(テキサス)などが進行中である。
リショアリングのコスト課題として、米国・欧州・日本の半導体製造コストは台湾・韓国比で25〜50%高くなると試算されている。コスト差の主要因は①人件費、②建設・維持コスト、③インフラコスト(電力・超純水)、④熟練技術者不足に伴う外国人エンジニアへの依存である。このため補助金なしには経済合理性が成立しにくく、政策支援の継続性が製造拠点の長期維持に不可欠となっている。
「フレンドショアリング(Friendshoring)」は、リショアリングの変形概念であり、自国内ではなく政治的に信頼できる同盟国・パートナー国に製造拠点を分散させるアプローチを指す。米国はインド・日本・ベトナムなどをフレンドショアリング先として積極的に関与しており、半導体サプライチェーンの「デリスキング(リスク低減)」を目指している。
リショアリングが半導体装置・材料産業に与える影響として、新規ファブ建設に伴う装置・材料需要の地域的多様化がある。Applied Materials・Lam Research・Tokyo Electronなどの装置メーカーは現地サポート体制の拡充と部品調達のローカライズ対応を迫られている。長期的には、複数の地域クラスターが形成されることでサプライチェーン全体の冗長性が高まる一方、規模の経済の損失による製造コスト上昇という構造的課題も伴う。