半導体輸出規制(Semiconductor Export Control)とは、国家安全保障・外交政策上の理由から特定の先端半導体製品・製造装置・技術の輸出を制限する政府による規制措置の総称である。米国が2022年10月に発動した対中半導体包括規制(Commerce Department Export Administration Regulations改定)が最も影響の大きい規制として業界に浸透しており、18nm以下DRAMや先端GPU・EUV露光装置の中国への輸出を実質的に禁止した。
米国の半導体輸出規制の技術的閾値として、2022年規制ではロジック半導体(16nm/14nm以下のFinFETまたはGAAなど)・NAND(128層以上)・DRAM(18nm以下ピッチ)が規制対象となった。さらに2023年・2024年の規制強化により、AI半導体の演算性能(FLOPS)に基づくコントロールや、「スモールヤード・ハイフェンス」方針に基づくより精緻な規制体系への移行が進んでいる。
輸出規制のサプライチェーンへの影響として、ASML(EUV・DUV装置の中国輸出制限)、Applied Materials・Lam Research・KLA(先端プロセス装置の許可申請義務化)、NVIDIA(H100/A100の輸出制限、A800/H800への性能制限版で対応)などが規制対応を迫られた。装置大手3社(AMAT・Lam・KLA)の中国売上高は全体の20〜30%を占めており、規制影響は大きい。
「Extraterritorial Control(域外適用)」は輸出規制の重要な概念であり、米国技術・ソフトウェアを一定割合以上(De Minimis Rule:25%以上)含む外国製品にも米国輸出規制が適用されるルールである。これによりTSMC(台湾)・東京エレクトロン(日本)・ASMLも実質的に米国輸出規制の影響下に置かれ、国際的な半導体サプライチェーン管理の複雑性が大きく増した。
日本・オランダも2023年以降に独自の輸出規制を導入し、米国・日本・オランダの三国協調による対中先端半導体規制の多国間枠組みが形成されている。中国は規制対応として半導体自給率向上(2030年70%目標)を国家戦略として掲げ、装置・材料の国産化(CXMT・SMICの先端ノード開発)を加速させている。輸出規制の長期的影響は半導体産業の地政学的再編を引き起こす構造変化要因として認識されている。