ウェットエッチング(Wet Etching)は、液体の薬液(エッチャント)にウェハを浸漬または薬液を噴射することで、ウェハ表面の特定の材料を選択的に溶解・除去するプロセスです。半導体製造における最も古典的なエッチング手法で、現在でも洗浄・自然酸化膜除去・選択的エッチング・バルク除去などに広く使われています。
代表的な薬液と用途として、HF(フッ酸)はシリコン酸化膜(SiO₂)の選択エッチングや自然酸化膜除去に使われます(シリコンは浸食せず高い選択比)。H₃PO₄(リン酸)は窒化ケイ素(SiN)のエッチングに使われます。KOH(水酸化カリウム)はシリコンの異方性エッチングに使われ、MEMS製造で特定の結晶面を露出させるのに有用です。SC-1/SC-2洗浄液は有機物・金属汚染の除去に使用されます。
ウェットエッチングの特性として、等方性(方向によらず均一にエッチングが進む)が基本です。このため、パターンの端部のシリコン基板下にエッチングが進む「アンダーカット」が生じやすく、微細なパターン形成には不向きです。現代の微細加工ではドライエッチング(異方性エッチング)が主力ですが、ウェットエッチングはドライでは難しい選択比の高い一括除去や、3D NAND製造のSiGe犠牲層除去などに不可欠です。
枚葉式洗浄装置(Single Wafer Cleaner)では、スピンスプレー方式で薬液をウェハに噴霧しながら回転させ、均一なウェットエッチング・洗浄を実現します。超純水(UPW)リンスや乾燥(IPA蒸気置換、ロタゴニウム乾燥など)との組み合わせが精度向上のポイントです。
主要装置メーカーはSCREENホールディングス(枚葉洗浄で世界トップ)、東京エレクトロン(TEL)、SEMESなどです。先端ノードでは、薬液の濃度・温度・流量・処理時間の精密制御が歩留まりに直結するため、装置の精度要求が年々高まっています。