チャージトラップフラッシュ(CTF:Charge Trap Flash)は、NANDフラッシュメモリのデータ記憶方式の一種で、フローティングゲート(浮遊ゲート:FG)の代わりに窒化シリコン(Si3N4)などの電荷トラップ膜に電荷を捕捉・保持することでデータを記憶します。従来のフローティングゲートNANDに比べ、セル間干渉(Cell-to-Cell Interference)が少なく、3次元積層(3D NAND)との相性が良いため、現在の主流3D NAND構造に採用されています。
CTFの基本構造は、O-N-O(SiO2-Si3N4-SiO2)のONOスタックです。下層SiO2(トンネル酸化膜)、中間Si3N4(電荷トラップ層)、上層SiO2(ブロッキング酸化膜)から構成されます。書き込み時はFNトンネリング(Fowler-Nordheimトンネリング)または熱電子注入で電荷をSi3N4に捕捉し、消去時は逆方向のFNトンネリングで電荷を放出します。
CTFが3D NANDに採用された最大の理由は、フローティングゲートと異なりセル間での電荷の浮遊ゲート間容量結合(IPD:Inter-Poly Dielectric問題)がないことです。3D NANDではワード線方向に多数のセルが積層されるため、セル間干渉の低減が密度向上の鍵です。Samsung(V-NAND)、SK Hynix、Micronが全てCTF構造を採用しています。
3D NAND製造ではCTF層をシリンダー状(垂直チャネル)の周囲に形成するため、高アスペクト比(現在のTLC 200層以上では300:1超)のシリンダーエッチングと、ALD(原子層堆積)によるO-N-O膜の均一なコンフォーマル成膜が必要です。エッチングの難度(均一性・垂直性・ボーイング抑制)が3D NANDの積層数拡大の最大のボトルネックです。
CTF材料としてSi3N4(窒化シリコン)が標準ですが、高誘電率材料(HfO2ベース)やフェロエレクトリック材料(HZO:Hf-Zr酸化物:FE-FET NAND)の採用も研究されています。FE-CTF(強誘電体チャージトラップ)はより高速書き換えと低電圧動作が期待され、次世代不揮発性メモリ技術の候補の一つです。製造装置では、Lam Research・Tokyo Electron・ASM Internationalが3D NAND向けALD/CVD・エッチング装置の主要サプライヤーです。