逆回復とは、pn接合ダイオードに順方向の電流が流れている状態から、急に逆方向の電圧をかけたときに、しばらくの間、逆向きに電流が流れる現象のことです。逆向きの電流が流れてから止まるまでの時間を逆回復時間(trr)、その間に流れる電荷を逆回復電荷(Qrr)、電流のピークを逆回復電流(Irr)と呼びます。インバータやスイッチング電源のように、高い周波数でダイオードをオン・オフする回路では、損失と雑音の大きな原因になります。
逆回復が起こるのは、pn接合ダイオードでは順方向に電流を流している間、接合の周りに少数キャリアが大量に蓄積しているためです。電圧を逆向きにしても、蓄積したキャリアが再結合で消えるか、逆向きの電流として引き抜かれるまでは、ダイオードは電流を止められません。この逆回復電流は、ブリッジ回路でオンになる側のトランジスタにも流れ込むため、ダイオード自身の損失に加えて、相手側のスイッチのターンオン損失も増やします。電流が急に止まると、配線のインダクタンスによって電圧のはね上がり(サージ)やリンギングが生じ、雑音(EMI)の原因にもなります。
対策として、白金や金の拡散、電子線やヘリウムの照射でキャリアのライフタイムを短くし、逆回復を速くしたファストリカバリーダイオード(FRD)が使われます。電流がなだらかに止まるソフトリカバリー特性も重要です。多数キャリアだけで動作するショットキーバリアダイオードには、原理的に少数キャリアの蓄積による逆回復がありません。SiC SBDは高耐圧でも逆回復がほとんど無いため、インバータの損失を大きく減らせます。MOSFETに内蔵されるボディダイオードの逆回復も、ブリッジ回路の設計で注意すべき特性です。