ダングリングボンド(Dangling Bond:未結合手)とは、原子が本来持つ結合の手のうち、結合する相手がなく余ってしまった結合の手のことです。「ぶら下がった結合」という意味です。シリコンの原子は4本の結合の手を持ち、結晶の内部では隣の4つの原子とすべての手で結合していますが、結晶の表面や、酸化膜との界面、結晶の欠陥やアモルファス(非晶質)の部分では、相手がいない手が生じます。
ダングリングボンドは、バンドギャップの中にエネルギー準位(欠陥準位)を作るため、電子や正孔を捕まえたり、電子と正孔の再結合を仲立ちしたりします。MOSトランジスタでは、シリコンとゲート酸化膜の界面のダングリングボンドが界面準位となり、キャリアを捕獲してしきい値電圧をずらし、移動度を下げ、雑音(1/fノイズ)を増やします。太陽電池やイメージセンサーでは、表面のダングリングボンドが光で生まれたキャリアを再結合で失わせ、変換効率の低下や暗電流の原因になります。
そのため、ダングリングボンドを水素などの原子で結合させてふさぐ処理(パッシベーション)が行われます。MOSトランジスタの製造の終わりには、水素を含むフォーミングガス中で400℃前後の熱処理を行い、界面のダングリングボンドを水素で終端して界面準位を大幅に減らします。アモルファスシリコンの膜も、水素を含ませる(a-Si:H)ことでダングリングボンドを減らし、太陽電池や薄膜トランジスタに使えるようになりました。ただし、使用中の電界や熱で水素が外れるとダングリングボンドが再び現れ、NBTIやホットキャリアによる特性劣化の原因になります。