点欠陥とは、結晶中の原子1個(またはごく少数)の位置に生じる乱れのことです。代表的なものに、本来原子があるべき格子点が空いている空孔(vacancy)、格子点の間の隙間に余分な原子が入り込んだ格子間原子(interstitial)、異なる種類の原子が格子点を占める置換型不純物があります。
点欠陥は、熱平衡の状態でも一定の割合で必ず存在する点が、転位など他の結晶欠陥と異なります。点欠陥を1つ作るのに必要なエネルギー(形成エネルギー)を E_f とすると、その濃度は exp(−E_f/kT) に比例し、温度とともに急激に増えます。シリコンの融点付近で取り込まれた空孔や格子間シリコンが、結晶を冷やす過程で消えきらずに過飽和となることが、COPなどの成長時導入欠陥の原因になります。
半導体製造で点欠陥が重要なのは、ドーパントの拡散を媒介するためです。シリコン中のホウ素やリンは主に格子間シリコンと対になって移動し、アンチモンは主に空孔を介して移動します。そのため、酸化やイオン注入で格子間シリコンが過剰になると、ホウ素の拡散が一時的に大きく加速されます。この過渡的増速拡散は、浅い接合を作るうえでの大きな障害になっています。
イオン注入は、点欠陥を大量に作る工程でもあります。高速のイオンがシリコン原子を格子点から弾き出し、空孔と格子間原子の対(フレンケル対)を次々に生み出します。注入量が多いと結晶が壊れてアモルファス化し、熱処理で再結晶化する際に、アモルファス層の端に残った格子間原子が転位ループ(EOR欠陥)を作ります。注入後のアニールは、ドーパントの活性化と同時に、これらの損傷を回復させる工程です。
点欠陥はバンドギャップ中に準位を作り、キャリアの捕獲や再結合の中心になります。特に鉄・銅・ニッケルなどの金属不純物は深い準位を作って少数キャリアのライフタイムを大きく縮めるため、極めて低い濃度での管理が求められます。化合物半導体では原子の欠損や入れ替わり(アンチサイト欠陥)が電気的性質を左右し、GaAsの半絶縁性はEL2と呼ばれる深い準位の点欠陥が関わって実現されています。