耐圧とオン抵抗の理論限界(ユニポーラ限界)計算ツール
最終更新:2026-09-26
要点
ユニポーラデバイスのドリフト層の特性オン抵抗は Ron,sp = 4BV²/(ε·μ·Ec³) で、耐圧の2乗に比例し、絶縁破壊電界 Ec の3乗に反比例します。SiC・GaN の Ec はシリコンの約10倍なので、同じ耐圧ならドリフト層を1/10の厚さにでき、理論上のオン抵抗は数百分の1になります。これがワイドバンドギャップ半導体がパワーデバイスに向く理由です。
入力
ドリフト層の特性オン抵抗(理論限界)0.3216mΩ·cm²
ドリフト層の最適濃度 ND1.75×10¹⁶cm⁻³
ドリフト層の厚さ W8.57µm
20 mΩ に必要な活性領域の面積(ドリフト層のみ)1.61mm²
Si に対するオン抵抗の比2.19×10⁻³倍
ドリフト層だけの理論限界です。実際のデバイスではチャネル抵抗・基板抵抗・コンタクト抵抗が加わり、特に耐圧600V以下のSiC MOSFETではチャネル抵抗が支配的になります。Si のスーパージャンクションMOSFETやIGBTは伝導度変調・電荷補償でこの限界を超えます。
耐圧と特性オン抵抗(ユニポーラ限界)
材料比較(耐圧 1200 V)
| 材料 | Eg | Ec(V/cm) | μn(cm²/Vs) | ND(cm⁻³) | ドリフト層厚 | Ron,sp(mΩ·cm²) | BFOM(Si比) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| シリコン(Si) | 1.12 eV | 3.0×10⁵ | 1400 | 2.4×10¹⁴ | 80.0 µm | 147 | 1 |
| ヒ化ガリウム(GaAs) | 1.42 eV | 4.0×10⁵ | 8500 | 4.8×10¹⁴ | 60.0 µm | 9.27 | 15.9 |
| 4H-SiC | 3.26 eV | 2.8×10⁶ | 950 | 1.8×10¹⁶ | 8.6 µm | 0.322 | 457 |
| 窒化ガリウム(GaN) | 3.44 eV | 3.3×10⁶ | 1250 | 2.3×10¹⁶ | 7.3 µm | 0.161 | 914 |
| 酸化ガリウム(β-Ga₂O₃) | 4.85 eV | 8.0×10⁶ | 200 | 1.5×10¹⁷ | 3.0 µm | 0.0635 | 2,320 |
ワイドバンドギャップ半導体がパワーデバイスに向く理由
耐圧を上げるには、低濃度で厚いドリフト層で電圧を受け止める必要があり、そのぶんオン抵抗が増えます。ユニポーラデバイスでは、特性オン抵抗は耐圧の2乗に比例し、絶縁破壊電界 Ec の3乗に反比例します。SiC や GaN の Ec はシリコンの約10倍なので、同じ耐圧ならドリフト層を1/10の厚さ・100倍の濃度にでき、オン抵抗は理論上数百分の1になります。
この違いを1つの数字にまとめたのが Baliga 性能指数(BFOM = ε·μ·Ec³)です。シリコンでは1kV級でユニポーラのMOSFETが実用的でなくなり、IGBTが使われてきましたが、SiC では1.2kV〜3.3kVでもMOSFETで低損失を実現でき、スイッチング損失の小さい高周波動作との両立が可能になりました。