結論:エンティティリストと外国直接製品規則(FDPR)の違いは?
違いは「規制の軸」です。エンティティリストは「誰に」売ってはいけないかを決めるリストで、掲載された企業へのEAR対象品目の輸出に米国政府の許可を義務づけます。FDPRは「どの製品」に米国の規制が及ぶかを決めるルールで、米国外で作られた製品でも米国の技術や装置を使って作られていればEARの対象にします。単独のエンティティリストは米国製品にしか効きませんが、FDPRと組み合わせることで、TSMCのような米国外の企業が作った製品まで掲載企業へ届かなくできます。
比較表
| 観点 | エンティティリスト | 外国直接製品規則(FDPR) |
|---|---|---|
| 規制の軸 | 誰に(相手先) | どの製品に(品目の範囲) |
| 形式 | 企業・機関・個人の名簿 | EARの規定(ルール) |
| 効果 | 掲載先へのEAR対象品目の輸出に許可が必要 | 米国外製品の一部をEARの対象品目に含める |
| 対象となる製品 | EAR対象品目(原則は米国由来の製品・技術) | 米国の技術・ソフトウェア・装置を使って作られた外国製品 |
| 米国外企業への影響 | 単独では限定的 | 大きい(米国製部品を含まない製品にも及ぶ) |
| 運用する機関 | 米国商務省産業安全保障局(BIS) | 米国商務省産業安全保障局(BIS) |
| 半導体での代表例 | Huawei(2019年)、SMIC(2020年)、YMTC(2022年) | Huawei向け(2020年)、先端コンピューティング向け(2022年)、装置向け(2024年) |
エンティティリストだけでは抜け道が残る
2019年にHuaweiがエンティティリストに掲載されたとき、米国企業は許可なくHuaweiに製品を売れなくなりました。しかしHuawei傘下のHiSiliconが設計したチップは、台湾のTSMCが製造していました。TSMCの製品は米国製ではなく、米国製部品の割合で判断するデミニミス・ルールにも該当しにくいため、エンティティリストへの掲載だけでは先端チップの供給を止められなかったのです。
FDPRが抜け道をふさぐ
そこで米国は2020年、Huawei向けにFDPRを拡張しました。米国のEDAツールで設計された、あるいは米国の技術で作られた製造装置を使って製造されたチップは、米国外で作られていてもEARの対象品目になり、Huaweiへの供給に許可が必要になりました。世界の先端ファブのほとんどが米国の装置を使っているため、TSMCはHiSiliconからの受託製造を停止しました。エンティティリストが相手を決め、FDPRが対象製品を広げることで、初めて実効的な規制になったわけです。
日本企業にとっての意味
日本の装置・材料メーカーにとって、エンティティリストは取引先の確認の問題、FDPRは自社製品の分類の問題です。取引先が掲載企業でないかをスクリーニングするだけでなく、自社製品が米国の技術や装置を使って作られていないかを確認し、FDPRが適用される相手への出荷に米国の許可が必要かを判断しなければなりません。2024年12月の装置向けFDPRでは、同等の規制を導入した日本とオランダが適用対象から除外されましたが、日本の外為法による規制への対応は別途必要です。