ワッセナー・アレンジメント(Wassenaar Arrangement)とは、通常兵器と、軍事にも民生にも使える汎用品・技術(デュアルユース品目)の輸出管理について、参加国が協調するための国際的な枠組みです。冷戦期の共産圏向け輸出規制であるCOCOM(ココム)が1994年に解散した後を受けて1996年に発足し、日本・米国・欧州各国など40か国あまりが参加しています。事務局はオーストリアのウィーンにあり、名称は設立交渉が行われたオランダの町ワッセナーに由来します。
参加国は、合意した規制品目リストを各国の国内法に取り込んで輸出管理を行います。半導体に関係するのは主に汎用品リストのカテゴリー3(エレクトロニクス)で、特定の性能を持つ集積回路、半導体製造装置、関連する材料やソフトウェア・技術が含まれます。日本では外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく政省令、米国では輸出管理規則(EAR)の規制品目リストに反映されています。ただし、どの国に輸出を許可するかの最終判断は各国に委ねられています。
ワッセナー・アレンジメントの弱点は、全参加国の合意(コンセンサス)で品目を決める点にあります。ロシアも参加国の一つであるため、2022年のウクライナ侵攻以降、新たな規制品目の追加で合意を得ることは難しくなりました。また、枠組みはもともと特定の国を名指しで規制するものではなく、特定国への先端技術の流出を防ぐという近年の目的には使いにくい面があります。
こうした限界から、半導体製造装置の規制は、ワッセナーの枠外で少数の装置生産国が協調する形に移っています。米国の2022年10月の対中規制に続き、日本は2023年7月に外為法の省令を改正して先端半導体製造装置など23品目を輸出管理の対象に加え、オランダも同年9月に先端のArF液浸露光装置などを許可制としました。ワッセナーは今も輸出管理の基盤ですが、先端技術の規制は有志国による枠組みが担う場面が増えています。