エンティティリスト(Entity List)とは、米国商務省の産業安全保障局(BIS)が、米国の安全保障や外交政策上の利益に反すると判断した外国の企業・研究機関・個人を掲載するリストです。米国の輸出管理規則(EAR)に基づき、掲載された相手に対してEAR対象の品目(米国製の製品・ソフトウェア・技術など)を輸出・再輸出・移転するには、事前に米国政府の許可が必要になります。半導体分野では、中国企業への先端技術の流出を防ぐ主要な手段として使われています。
掲載の効果は、許可の審査方針によって強さが変わります。多くの中国半導体企業には「原則不許可(presumption of denial)」の方針が適用されており、実質的に取引が禁じられます。半導体関連の代表的な掲載例として、Huawei(2019年)、SMIC(2020年)、YMTC(長江存儲、2022年)などがあります。なお、所在を確認できない相手を載せる「未検証リスト(UVL)」は別のリストで、エンティティリストより措置は軽くなります。
エンティティリストの影響は米国企業にとどまりません。EARは米国外で製造された製品でも、米国製の部品や技術が一定割合以上含まれる場合(デミニミス・ルール)や、米国の技術・装置を使って作られた場合(外国直接製品規則:FDPR)に適用されるためです。2020年にはHuawei向けにFDPRが拡張され、TSMCなど米国外のファウンドリもHuawei傘下のHiSiliconへの製品供給を停止しました。
日本の半導体装置・材料メーカーにとっても、エンティティリストは取引先の確認に欠かせない情報です。掲載企業との取引に米国由来の技術や部品が関わる場合、日本企業であっても米国の許可が必要になりうるためです。リストは随時更新され、中国の半導体・AI関連企業の追加が続いていることから、各社は輸出管理部門で取引先を継続的にスクリーニングしています。