ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)は、特定の用途・アプリケーションに特化して設計・製造された集積回路です。汎用のCPUやFPGAとは異なり、目的の処理を専用回路で実装することで、消費電力・処理速度・回路面積の面で最適化された性能を発揮します。スマートフォンのSoC(Apple Aシリーズ・Qualcomm Snapdragon)、AIアクセラレータ(Google TPU、Amazon Trainium)、ネットワーク機器のパケット処理チップ、暗号通貨マイニングチップなどがASICの代表例です。
ASICの設計はRTL(Register Transfer Level)記述から始まり、論理合成(Logic Synthesis)、配置配線(Place & Route)、DRC/LVS検証を経てGDSIIデータを作成し、ファウンドリへのマスクテープアウトに至ります。この設計フローにはSynopsys・Cadence・Siemens EDAなどのEDAツールが必須で、先端ノードの1チップ設計コストは数十億〜数百億円規模に達します。
最先端のAI向けASICはGoogleのTPU(Tensor Processing Unit)やAmazon Trainium/Inferentiaに代表されます。これらはトランスフォーマーモデルの行列演算に最適化されたデータフロー型アーキテクチャを採用し、同等の演算性能において汎用GPUより電力効率が高い場合があります。テック大手によるカスタムASIC内製化の潮流(In-house Silicon)はTSMCやSamsungへの先端プロセス需要を多様化させています。
スマートフォン用SoC(Apple A18、Qualcomm Snapdragon 8 Gen4、MediaTek Dimensity)もASICの一種で、CPU・GPU・NPU・DSP・カメラISP・ベースバンドを1チップに統合します。TSMC 3nm(N3)プロセスでの製造が標準的になっており、先進パッケージングとの組み合わせでさらなる高性能化が進んでいます。
ASICの設計費用(NRE:Non-Recurring Engineering)は7nm以降の先端ノードで数十億円以上に達し、量産数量が確保できる大規模案件でなければペイしません。このため中小企業や試作段階ではFPGAが選ばれます。一方でボリューム品の単価はFPGAより桁違いに安くなるため、大量生産・長期量産品にはASICが優位です。