最終更新 2026-10-07

仕事関数メタルとは(WF Metal)

Work Function Metal (WF Metal)
目次8項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. よくある質問
  4. 設備の製造メーカー
  5. 関連する製品
  6. 関連用語
  7. 比較・違いを学ぶ
  8. 出典・参考資料

定義・解説

仕事関数メタル(Work Function Metal:WF Metal)とは、MOSFETの閾値電圧(Vth)を制御するためにゲートスタック内に挿入される金属薄膜層です。High-k/Metal Gate(HKMG)構造において、ゲート絶縁膜(HfO₂)の上に形成されるメタルゲートのうち、Vthチューニングに特化した薄い仕事関数制御層を指します。NFETには低仕事関数材料(~4.0〜4.2eV:TiAlC・TiAl・TiAlN等)、PFETには高仕事関数材料(~4.8〜5.2eV:TiN多層・TaN等)が使用されます。

仕事関数(Work Function)とはゲート電極材料の電子を真空準位まで引き出すのに必要なエネルギー(eV)で、これがMOSFETの閾値電圧を決定します。ポリシリコンゲート時代は不純物ドーピング濃度でVthを調整していましたが、フェルミレベルピニング問題(High-k絶縁膜とポリシリコンの界面でフェルミレベルが固定されVthが制御不能になる現象)により、High-k導入とともにメタルゲートへの移行が必須になりました。メタルゲートでは仕事関数(材料固有の値)が直接Vthに反映されます。

WF Metalの成膜は全てALD(原子層堆積)で行われます。TiNはTiCl₄+NH₃のサーマルALD(約350〜400℃)で成膜され、仕事関数は積層数・Cl残留量・アニール条件で~4.5〜5.0eVの範囲でチューニング可能です。NFETに必要な低仕事関数にはAlを含む前駆体(TDEAl等)を用いたTiAlC/TiAlN層をTiNの上に追加します。先端ノードでは4〜6種類の異なる仕事関数メタルを積層し、多閾値電圧(Multi-Vth)設計を実現します。

Multi-Vth(多閾値電圧)設計とは、同一チップ内に異なる閾値電圧を持つトランジスタを配置し、高速動作領域・低消費電力領域を使い分ける設計手法です。WF Metalの積層数・組成を変えることでNFET/PFETそれぞれに3〜4段階のVthを設定します(Ultra-Low Vth / Standard Vth / High Vth等)。これによりCPUのコアロジックはULVt(高速)、スタンバイ回路はHVt(低リーク)というチューニングが可能になります。

仕事関数メタルの成膜精度は先端ロジックの電気特性を左右する最重要工程の一つです。主要ALD装置メーカーはASM International(Polygon ALD)・Applied Materials(Centura ALD)・Lam Research・東京エレクトロン(TEL)です。前駆体メーカーとしてMerck(TiCl₄・TDEAl・TDMAHf)・Entegris・Air Productsが主要サプライヤーです。GAAナノシートではナノシート間のWF Metal充填とGate-Cut(ゲート分断)技術の精度がますます重要になっています。

図解

仕事関数メタルの仕事関数とシリコンのバンド端の関係(nFET・pFET用材料)
ポリシリコンゲートではドーピングで決めていたしきい値電圧を、金属の選び方で決める。値は目安。

関連するデータ・ツール

データ仕事関数一覧(金属・電極材料)計算・換算ツールMOSFETしきい値電圧(Vth)計算ツール

この用語を扱う職種

設計・デバイス開発デバイスエンジニア(トランジスタ開発)

よくある質問(FAQ)

仕事関数メタル(WF Metal)とは何ですか?
WF Metal(Work Function Metal)とは、MOSFETゲートスタック内でトランジスタの閾値電圧(Vth)を決定する金属薄膜です。High-k誘電体(HfO2)の上にALDで成膜されます。NFETには低仕事関数(4.0〜4.2eV)のTiAlC系、PFETには高仕事関数(4.8〜5.2eV)のTiN系材料を採用します。材料・層数・組成を変えることでVthを精密にチューニングできます。
仕事関数とは何ですか?MOSFETのVthにどう影響しますか?
仕事関数(Work Function)は、金属中の電子を真空準位まで引き出すのに必要なエネルギー(単位:eV)です。ゲート電極の仕事関数はシリコンチャネルのバンド構造に対するゲート電位の基準値を決め、直接Vthに反映されます。低仕事関数のゲートはNFETのVthを下げ(高速動作可能)、高仕事関数のゲートはPFETのVthを最適化します。
Multi-Vth設計とは何ですか?
Multi-Vth(多閾値電圧)設計とは、同一チップ内に異なるVthのトランジスタを混在させる設計手法です。WF Metalの積層数・組成でVthを段階的に設定します。例えばULVt(Ultra Low-Vt:高速・高リーク)をクリティカルパスに、LVt・SVtを一般ロジックに、HVt(High-Vt:低速・低リーク)をスタンバイ回路に使い分けることで、性能と消費電力を同時に最適化します。
TiNとTiAlCはどう違いますか?
TiN(窒化チタン)は仕事関数約4.5〜5.0eVで主にPFET向けに使用されます。TiCl4+NH3のALDで成膜し、積層数でVthを調整します。TiAlC(チタンアルミニウムカーバイド)はAl含有により仕事関数を約4.0〜4.3eVまで下げたNFET向け材料です。TDEAl等のAl前駆体を用いたALDで成膜します。先端ロジックではTiN/TiAlC/TiN等の多層積層でNFET/PFETを同時に最適化します。
WF Metalの主要メーカーと装置サプライヤーは?
ALD装置:ASM International(Polygon)・Applied Materials(Centura)・Lam Research・東京エレクトロンが主要4社です。前駆体材料:Merck(TiCl4・TDEAlなど)・Entegris・Air Productsがリードサプライヤーです。WF Metal成膜はASM InternationalがHigh-k/Metal Gate工程全体でトップシェアを持ちます。

設備の製造メーカー

この用語に関連する製品

型番は各社の公式製品ページで確認したものです。出典のリンクは各製品ページに載せています。

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Kokusai Electric(国際電気)日本

比較・違いを学ぶ

出典・参考資料

  1. Applied Materials「Endura® Avenir® RF PVD 製品ページ」(2026/10/07 確認)
  2. ASMインターナショナル「XP4 EmerALD® 製品ページ」(2026/10/07 確認)