パッシェンの法則(放電開始電圧)計算ツール
要点
放電開始電圧は圧力×電極間距離(pd)の関数で、Vb = B·pd / (ln(A·pd) − ln(ln(1+1/γ))) の谷形の曲線(パッシェン曲線)になります。空気の最小放電電圧は約330V前後です。プラズマ装置では、処理室は放電しやすい条件に、配管やウェハ裏面など放電させたくない場所は谷から遠い pd に設計します。
入力
放電開始電圧 Vb202V
pd 積0.7501Torr·cm
(Pa·m 換算)1.000Pa·m
最小放電電圧 Vb,min188V
最小になる pd1.045Torr·cm
現在の条件はパッシェン曲線の左側(低圧・短ギャップ側)
パッシェン曲線の左側では、圧力を下げる(またはギャップを狭める)ほど放電しにくくなります。プラズマ装置でウェハ裏面や狭い隙間に異常放電を起こさないための設計指針になります。
A・B は特定の E/p の範囲で当てはめた実験定数で、pd が極端に小さい・大きい領域では精度が落ちます。高周波放電(13.56MHz など)の開始電圧は、電子が電極間で振動して失われにくいため直流より低くなります。
パッシェン曲線
気体ごとの定数と最小放電電圧(γ = 0.01)
| 気体 | A(1/cm·Torr) | B(V/cm·Torr) | pd_min | Vb,min |
|---|---|---|---|---|
| 空気 | 15 | 365 | 0.836 Torr·cm | 305 V |
| 窒素(N₂) | 12 | 342 | 1.045 Torr·cm | 358 V |
| アルゴン(Ar) | 12 | 180 | 1.045 Torr·cm | 188 V |
| ヘリウム(He) | 3 | 34 | 4.182 Torr·cm | 142 V |
| 水素(H₂) | 5 | 130 | 2.509 Torr·cm | 326 V |
| 二酸化炭素(CO₂) | 20 | 466 | 0.627 Torr·cm | 292 V |
放電しやすい圧力には谷がある
放電が始まるには、陰極から出た電子が陽極に着くまでに気体分子と衝突して十分な数の電子を増やす必要があります。圧力が高すぎると衝突が多すぎて電子が加速されず、低すぎると衝突が少なすぎて電子が増えません。このため放電開始電圧は圧力×距離(pd)に対して谷形の曲線になり、谷底の pd で最も放電しやすくなります。
プラズマ装置は、処理室では放電しやすい条件を選び、ガス配管、静電チャックのヘリウム冷却溝、ウェハの裏面といった放電させたくない場所では pd を谷から遠ざけて設計します。真空中の高電圧部品が大気圧でも真空でもなく、途中の数百Pa付近で放電しやすいのも同じ理由です。