静電チャック(ESC:Electrostatic Chuck)は、誘電体層に埋め込んだ電極へ直流電圧を印加し、静電気力(クーロン力またはジョンセン・ラーベック力)でウェハをステージに吸着・保持する装置部品です。真空チャンバー内では大気圧差を利用した真空チャックが使えないため、エッチング・PECVD・PVD・イオン注入など、ほぼすべての真空プロセス装置でウェハ保持の標準手段となっています。
吸着方式は誘電体の体積抵抗率によって2種類に分かれます。クーロン型は高抵抗(10¹⁵Ω·cm以上)のアルミナ等を使い、真の静電容量による吸着力を得る方式で、脱着応答が速く残留吸着が起きにくい特長があります。ジョンセン・ラーベック(JR)型は中抵抗(10⁹〜10¹²Ω·cm)の窒化アルミ(AlN)等を使い、微小な漏れ電流により実効ギャップを縮めて数倍の吸着力を得られますが、温度依存性が大きく脱着時の残留吸着に注意が必要です。
ESCの本質的な役割は「保持」よりも「熱制御」にあります。プラズマからウェハへ流入する熱を逃がすため、ESC内部には冷媒流路が設けられ、ウェハ裏面とESC表面の間にはHe(ヘリウム)バックサイドガスを数Torr〜数十Torr導入して熱伝導を確保します。吸着力が弱いとHeがリークし、面内の温度分布が崩れてエッチング形状やCD(寸法)の均一性が悪化するため、吸着力・He圧・ゾーン分割された温度制御が一体で設計されます。
先端プロセスではESCの多ゾーン化が進んでいます。高アスペクト比エッチングでは面内温度差を±1℃以下に抑えることが要求され、同心円状に分割された複数ゾーンをそれぞれ独立に加熱・冷却するマルチゾーンESCが標準になりました。誘電体表面はプラズマに曝されるため、耐プラズマ性の高いAlN・アルミナが使われ、表面にはウェハ裏面へのパーティクル付着を減らすためのエンボス(微小突起)加工が施されます。
ESCは高精度セラミック部材であり、日本ガイシ・TOTO・クリエイティブテクノロジー・京セラなどが主要サプライヤーです。装置メーカー(Lam Research・東京エレクトロン・Applied Materials)は自社設計のESCを部品メーカーと共同開発するケースが多く、消耗に伴う定期交換と再生(表面研磨・再コーティング)もファブの運用コストに含まれます。