ケイ素(Silicon:シリコン)とは、原子番号14、元素記号Siの元素で、半導体デバイスの大部分を作る基本材料です。日本語の正式な元素名は「ケイ素(珪素)」で、英語名のsiliconに由来する「シリコン」とも呼ばれ、半導体業界では主にシリコンと呼びます。なお、ケイ素を骨格に持つ樹脂のシリコーン(silicone)は別の物質です。ケイ素は酸素に次いで地殻に多い元素で、地殻の重さの約4分の1以上を占め、石英や砂の主成分である二酸化ケイ素(SiO₂)として大量に存在します。
シリコンが半導体の主役になった理由はいくつかあります。結晶はダイヤモンド構造(格子定数約0.543nm)で、バンドギャップが約1.12eVと室温で扱いやすく、ホウ素やリンなどのドーパントで電気伝導の型と量を精密に制御できます。最大の強みは、熱酸化で表面に良質な絶縁膜(SiO₂)を形成でき、その界面の欠陥が少ないことで、これがMOSトランジスタを作るうえで決定的に重要でした。さらに原料が豊富で、直径300mmの大きな無欠陥に近い単結晶を作れる技術が確立しています。融点は約1,414℃、密度は約2.33g/cm³です。
半導体用のシリコンは、何段階もの精製を経て作られます。まず珪石(石英)を炭素で還元して純度98〜99%程度の金属シリコンを作り、これを塩化水素と反応させてトリクロロシランなどのガスにし、蒸留で精製したうえでシーメンス法で析出させ、純度99.999999999%(イレブンナイン)級の多結晶シリコンを得ます。これをチョクラルスキー法で単結晶インゴットに育て、スライス・研磨してウェハにします。パワー半導体や高周波・光デバイスでは、SiCやGaN、GaAsなどの化合物半導体がシリコンの限界を補っています。