劈開(へきかい:Cleavage)とは、結晶が特定の結晶面に沿って平らに割れる性質、またはその割れ方のことです。結晶は原子の並び方によって、原子どうしの結合が弱い面や、面と面の間の結合の数が少ない面があり、力を加えるとその面に沿って割れやすくなります。こうして現れた平らな面を劈開面と呼びます。雲母が薄くはがれたり、岩塩が四角く割れたりするのも劈開の例です。
シリコンはダイヤモンド構造で、主に{111}面に沿って劈開し、{110}面でも割れます。一般的な(100)面のウェハを割ると、オリエンテーションフラットやノッチの方向に沿って、表面に直角な直線状の割れ目が入ります。この性質は、ウェハやチップを割って断面を出すことに使われ、断面のSEM観察の試料作りでは、ウェハに小さな傷を付けて劈開させ、加工した構造の断面を平らに露出させます。ダイシングでも、ステルスダイシングのように内部に改質層を作って割る方法は、結晶が割れやすい方向を考慮して条件を決めます。
化合物半導体のGaAsやInPは{110}面で非常にきれいに劈開し、原子レベルで平らな鏡のような面が得られます。半導体レーザーでは、この劈開面をそのまま光を反射させる共振器の鏡(ファセット)として使い、ウェハを短冊状に劈開してレーザーの端面を作ります。劈開面の平らさと汚れのなさがレーザーの性能と寿命を左右するため、劈開後に端面へ保護膜を付けます。逆に、意図しない劈開はウェハの割れやチップの欠けの原因になるため、搬送や研削では結晶方位と応力のかかり方に注意します。