カットオフ周波数(Cutoff Frequency)とは、回路や素子がそれ以上の周波数では十分に働かなくなる境目の周波数です。フィルタや増幅回路では、出力が通過域より3dB(電力で半分)下がる周波数を指し、低い周波数だけを通すローパスフィルタでは、これより高い周波数の信号が減衰します。トランジスタでは、電流利得(入力電流に対する出力電流の比)が1まで下がる周波数を遮断周波数fT(トランジション周波数)と呼び、高周波性能を表す最も代表的な指標です。
トランジスタの利得が高周波で下がるのは、内部の容量を充電・放電するのに時間がかかるためです。MOSFETでは、fTはおおむね相互コンダクタンスgmをゲートの容量(Cgs+Cgd)で割った値に比例し、fT≈gm/2π(Cgs+Cgd)で表されます。ゲート長を短くすると、キャリアがチャネルを通り抜ける時間が短くなり、容量も小さくなるため、微細化とともにfTは高くなってきました。バイポーラトランジスタやHBTでは、キャリアがベースを横切る時間が主に効くため、ベースを薄くするほどfTが上がります。電力利得が1になる周波数は最大発振周波数fmaxと呼ばれ、ゲートやベースの抵抗の影響も受けるため、fTと並べて評価されます。
高い遮断周波数が必要な用途では、材料と構造が選ばれます。電子の移動度が高いGaAsやInPのHEMT・HBT、SiGeのHBTは、シリコンのCMOSより高いfTを得やすく、ミリ波レーダーや光通信、5G・6Gの無線回路に使われ、研究段階では数百GHzを超えるfTが報告されています。実際の回路では、トランジスタのfTの数分の1から10分の1程度の周波数で使うのが目安とされ、使う周波数より十分高いfTを持つデバイスを選ぶ必要があります。