IPA乾燥(マランゴニ乾燥)とは、イソプロピルアルコール(IPA)の蒸気を利用して、ウェハ表面の超純水を液滴として残さずに引き剥がす乾燥手法です。洗浄工程の最後にどう乾かすかは洗浄そのものと同じくらい重要で、乾かし方を誤ればウォーターマークや再汚染が発生し、それまでの洗浄が無意味になります。
原理はマランゴニ効果(表面張力勾配による流れ)です。水より表面張力の低いIPA蒸気が水膜の縁に溶け込むと、その部分だけ表面張力が下がり、表面張力の高い側へ向かって液が引かれます。ウェハを水中からゆっくり引き上げながら気液界面にIPA蒸気を供給すると、水膜が界面で連続的に引き剥がされ、液滴を残さずに乾いた面が現れます。
従来のスピン乾燥(高速回転で水を振り切る方式)と比べた利点は明確です。スピン乾燥では遠心力で振り切れなかった微小な液滴が表面に残り、それが蒸発する際に溶存していたシリカや金属を析出させてウォーターマークになります。マランゴニ乾燥では液滴そのものを作らないため、この経路を原理的に断てます。
枚葉洗浄装置では、ウェハを回転させながら中心から外周へIPAノズルを移動させ、水膜の境界を外側へ押し出していく方式が使われます。バッチ装置では、薬液槽から引き上げる際にIPA蒸気を供給する構成をとります。IPAは可燃性であるため、窒素で希釈した蒸気として供給し、装置には防爆・排気の設計が求められます。
より微細な構造では、IPA乾燥でも表面張力によるパターン倒壊が避けられない場合があります。その領域では、超臨界CO₂を使って気液界面自体を消滅させる超臨界乾燥が検討されます。乾燥は「水をどう飛ばすか」ではなく「気液界面をどう扱うか」の技術です。