DHF洗浄(Dilute HF Cleaning:希フッ酸洗浄)とは、フッ酸(HF)を超純水で希釈した洗浄液(一般的にHF濃度0.1〜1%)を用いてシリコン酸化膜(SiO₂)や自然酸化膜を選択的に除去する洗浄プロセスです。ゲート酸化膜形成前・エピタキシー成長前・コンタクト形成前など、シリコン表面を清浄な水素終端状態(H-Si結合)にする目的で半導体製造の各所で使われます。シリコン酸化膜のエッチングレートは約1nm/秒(1% HF、室温)で制御性が高い洗浄法です。
DHF洗浄の反応原理はフッ酸によるSiO₂の選択的エッチングです(SiO₂ + 6HF → H₂SiF₆ + 2H₂O)。純シリコン(Si)はフッ酸に対してエッチングレートが低く選択性があるため、ゲート酸化膜を除去せずにその上の自然酸化膜・パーティクルを除去できます。DHF処理後のシリコン表面はSi-H結合(水素終端)となり、空気中での自然酸化膜再成長を一時的に抑制する「疎水性表面」となります。
EUVプロセスにおけるDHF洗浄の重要性が高まっています。EUV露光で使われるSn(スズ)ベースのプラズマ光源からのSnデポジションがマスク・ウェハ表面に付着する問題があり、Snの除去にDHFの希釈変種が使われています。またEUV後のハードマスク(TiN・Si系)の選択的除去にもフッ酸ベースの洗浄が活用されており、DHFとH₂O₂を組み合わせたFPM(Fluoride Peroxide Mixture)洗浄の研究も進んでいます。
DHF洗浄における安全管理は特に重要です。フッ酸は皮膚・粘膜への浸透性が高く、低濃度でも体内フッ化物イオンがカルシウムと結合して低カルシウム血症・心停止を引き起こすリスクがあります。ファブではHF専用ドラフトチャンバー・耐HFポリマーライニングの配管・HFガス漏洩センサー・専用中和設備(石灰石スラリー中和槽)が必須インフラです。廃液処理ではCaF₂スラッジとして回収・埋立処分または蛍石として再利用されます。
DHF洗浄の市場は洗浄装置・高純度フッ酸の両面で安定的な需要があります。超高純度フッ酸(金属不純物10ppt以下、SEMI Grade5相当)はステラケミファ・モリタ化学・Honeywell・BASF・Solvayが供給し、先端ファブへの安定供給が求められます。装置面ではSCREEN・TEL・Lam Research(SPTS)のバッチ式・枚葉式洗浄装置にDHF処理機能が組み込まれており、洗浄プロセスの統合化・自動化が進んでいます。