SPM洗浄(Sulfuric Acid and Hydrogen Peroxide Mixture:硫酸過酸化水素水混合液洗浄)とは、濃硫酸(H₂SO₄)と過酸化水素(H₂O₂)を混合した洗浄液(ピラニア溶液とも呼ばれる)を用いてウェハ表面の有機物・フォトレジスト残渣・金属汚染を除去する洗浄プロセスです。露光・エッチング後のレジスト除去工程で標準的に使われ、半導体製造の洗浄工程の中で最も処理液の使用量が多い洗浄方法の一つです。
SPM洗浄の原理は強酸化作用にあります。H₂SO₄とH₂O₂の混合時に発生するペルオキソ一硫酸(Caro's acid:H₂SO₅)が有機物を瞬時に酸化分解し、フォトレジストの主成分(ノボラック樹脂・PAC)・ハードベーク後の炭化レジストも除去できます。処理温度は120〜150℃が標準で、高温ほど反応速度と洗浄効率が向上します。プロセス後はUPW(超純水)によるリンスと乾燥(スピン乾燥・IPA蒸気乾燥)が続きます。
先端プロセスにおけるSPM洗浄の課題はパターン倒れと金属汚染です。3nm以下のFinFET・GAAでは高アスペクト比の微細構造が形成されており、SPM洗浄後のリンス・乾燥時の表面張力によるパターン倒れ(Pattern Collapse)が問題化しています。この対策として超臨界CO₂乾燥・IPA置換乾燥・凍結乾燥などが研究されています。また硫酸中の金属(Fe・Cu・Na等)汚染がデバイス特性に影響するため、超高純度硫酸(金属濃度ppbレベル以下)の使用が必須です。
SPM洗浄装置は枚葉式と バッチ式に分類されます。枚葉式(シングルウェハ)はSCREEN・TEL・LAM が主要サプライヤーで、1枚ずつ処理することで液の持ち込み・持ち出しを最小化し先端ノードの汚染管理に優れます。バッチ式は複数ウェハを一括処理しスループットが高く、生産性重視の成熟ノードで多く使われます。環境規制の強化に伴い、H₂SO₄の使用量低減・リサイクル(SPMリサイクルシステム)も導入が進んでいます。
洗浄薬液市場ではSPM用の超高純度硫酸・過酸化水素が安定した需要を持ちます。三菱ケミカル・ステラケミファ・関東化学・BASF・Entegrisが主要サプライヤーです。先端ノードでは1バッチ当たりの薬液コストが上昇しており、SPM薬液の再生利用(closed-loop recycling)システムの普及がファブの環境負荷低減とコスト削減の両方に貢献しています。