ドライ洗浄とは、薬液や超純水を使わず、気相の反応種で表面の酸化膜や残渣を除去する洗浄手法です。液体を使わないため表面張力が働かず、微細な凹凸構造でもパターン倒壊が起きないこと、そして乾燥工程が不要でウォーターマークが発生しないことが、ウェット洗浄に対する決定的な利点です。
代表的な方式がCOR(Chemical Oxide Removal)です。HF系ガスとNH₃(またはNF₃とNH₃をリモートプラズマで解離させたもの)をウェハ表面に供給し、SiO₂と反応させてケイフッ化アンモニウム((NH₄)₂SiF₆)という固体の中間生成物を作ります。その後100〜200℃に加熱するとこの生成物が昇華して消え、酸化膜だけが除去されます。反応が自己停止的なため、除去量をÅ単位で制御できます。
適用場面は、コンタクトホール底の自然酸化膜除去(プレクリーン)、エピタキシャル成長前の表面処理、FinFETやGAAのような3次元構造の狭いスペースに入り込んだ酸化膜の除去などです。液体では入り込めない、あるいは入り込むと抜けなくなる構造に対して、気相反応は本質的に有利に働きます。
課題は、生成物の残留とチャンバー内への再堆積です。昇華させた(NH₄)₂SiF₆は排気経路の低温部で再び固化して詰まりの原因になるため、配管の加熱とパージが必要です。また、処理できるのは主に酸化膜であり、パーティクルの物理的な除去や有機汚染の分解にはウェット洗浄やプラズマアッシングが引き続き必要です。
ドライ洗浄はウェット洗浄を置き換えるものではなく、「液体が使えない場所」を担当する補完技術として位置づけられます。装置は東京エレクトロン・Applied Materials・Lam Researchなどがエッチング装置や成膜装置のプレクリーンモジュールとして供給しています。