ブラシ洗浄(スクラバ洗浄)とは、PVA(ポリビニルアルコール)製のスポンジ状ブラシをウェハ表面に接触・回転させ、薬液を供給しながら物理的にパーティクルを掻き落とす洗浄手法です。CMP後の残留スラリー除去(ポストCMP洗浄)で標準的に使われ、CMP装置に洗浄モジュールとして組み込まれるのが一般的です。
PVAブラシが使われるのは、多孔質で柔らかく、ウェハ表面に傷をつけずに接触できるためです。ブラシは表面に直接触れるのではなく、薬液の薄い膜を介して粒子に力を伝えると考えられており、ブラシ自体が粒子を保持して持ち去る役割も担います。ブラシに保持された粒子が次のウェハへ移る「クロスコンタミネーション」を防ぐため、ブラシ自身の洗浄(ブラシリンス)が処理サイクルに組み込まれます。
薬液の選定は、除去対象と下地材料で決まります。酸化膜面では粒子と表面を同符号に帯電させて静電的に反発させるためアルカリ性(希アンモニア水など)を、銅配線面では腐食を抑えつつ有機残渣を落とすためクエン酸などの錯化剤を含む薬液を使います。CMPスラリーの砥粒(シリカ・セリア)は表面に強固に付着するため、化学的な剥離力と機械的な力の両方が必要です。
課題は、ブラシの劣化と傷の発生です。PVAは使用とともに目詰まりし弾力を失うため、定期交換が必要な消耗部品です。またブラシに硬い異物が噛み込むと、それがウェハ全面にスクラッチを引く原因になります。銅配線のような柔らかい面では、わずかな接触でも欠陥になり得るため、押し付け量と回転数の管理が重要です。
ブラシ洗浄は、メガソニックや二流体のような非接触方式と比べると物理力が強く、CMPスラリー残渣のような「しつこい汚れ」に対して確実性が高い手法です。そのため微細化が進んだ現在でも、ポストCMP洗浄の中核として使われ続けています。