OHT(Overhead Hoist Transport)は、クリーンルームの天井に敷設したレール上を走行し、FOUPを装置間で自動搬送する無人搬送車です。AMHS(自動搬送システム)の実行部隊であり、300mmファブでは工程間のウェハ移動をほぼ全面的にOHTが担っています。
OHTが天井を走る理由は明確です。床面は装置と作業動線で占有されており、床走行のAGVでは経路が制限され交通渋滞が起きます。天井空間を使えば装置レイアウトに干渉せず、最短経路を確保できます。さらにクリーンルームは天井から床へ一方向気流(ダウンフロー)が流れるため、天井付近で発生した粒子は装置上部を通り抜け、ウェハに到達しにくいという清浄度上の利点もあります。
動作は、レール上を走行してロードポート上部で停止し、ホイスト機構でFOUPを鉛直に吊り下ろして載置する、という手順です。吊り下ろし時の揺れはFOUP内のウェハに衝撃を与えるため、振れ止め制御と加減速の最適化が求められます。1台のファブに数百〜千台規模のOHTが走り、1日あたり数万回の搬送が発生します。
運用の中核は搬送スケジューリングです。搬送要求はMESから発行され、AMHS制御システムが車両割り当てと経路を決定します。特定エリアに搬送要求が集中すると渋滞が発生し、装置の待ち時間(アイドル)が増えてファブ全体のサイクルタイムが悪化するため、混雑予測と経路分散のアルゴリズムが生産性を大きく左右します。ボトルネック装置の前ではストッカーやサイドバッファと連携し、仕掛品の滞留を吸収します。
主要メーカーはダイフク・村田機械(Murata Machinery)で、この2社が世界市場を二分しています。新設ファブでは装置搬入前にOHTレールの敷設が行われるため、ファブ建設スケジュールとも密接に関係する設備です。