化学増幅型レジストとメタルオキサイドレジストの違い
EUV露光の微細化が進むにつれて、レジストの材料が大きな課題になっています。長く主流だった化学増幅型レジストに対し、金属の酸化物を使うメタルオキサイドレジストが登場し、両者の改良が並行して進んでいます。ここでは2つの違いを、仕組みとEUVでの性能の観点から整理します。
結論
違いは主成分と反応の仕組みです。化学増幅型レジスト(CAR)は有機の樹脂と光酸発生剤でできており、光で生じた酸が触媒となって反応を何度も広げることで感度を高めます。メタルオキサイドレジスト(MOR)はスズなどの金属酸化物の小さな塊でできており、EUVの光をよく吸収して直接結合が変わります。MORは薄い膜でも光を効率よく使え、酸の拡散によるぼやけがなく、エッチングにも強いため、高NA EUVの世代で期待されています。CARは長い量産の実績があり、KrFからEUVまで主流です。
主な違い
| 観点 | 化学増幅型レジスト(CAR) | メタルオキサイドレジスト(MOR) |
|---|---|---|
| 主成分 | 有機の樹脂と光酸発生剤(PAG) | スズなど金属の酸化物の小さな塊 |
| 反応の仕組み | 光で生じた酸が触媒として反応を広げる | EUVの光で直接結合が変わる |
| EUVの吸収 | 小さい(光子を十分に使いにくい) | 大きい(薄い膜でも光を使える) |
| ぼやけの要因 | 酸の拡散 | 酸の拡散がない |
| エッチング耐性 | 比較的低い | 高い |
| 主な型 | 主にポジ型 | 主にネガ型 |
| 実績 | KrF・ArF・EUVで長い量産の実績 | EUV向けに開発・導入が進む |
化学増幅型レジストは「酸の連鎖」で感度を上げる
化学増幅型レジストは、露光で光酸発生剤が分解して酸を出し、その酸が露光後ベーク(PEB)の熱で動きながら、樹脂の保護基を次々に外していきます。1つの酸が数百回以上の反応を起こすため、少ない光でパターンを作れます。KrF露光でそれまでのレジストでは感度が足りなくなったことから実用化され、ArF、ArF液浸、EUVの世代まで主流であり続けています。一方で、酸が動く距離の分だけパターンの境目がぼやけ、線の粗さ(LER)の原因になります。
EUVでは光子の少なさが問題になる
EUVの光(13.5nm)は1つの光子のエネルギーが大きい代わりに、同じエネルギー量で比べると光子の数が少なくなります。有機のレジストはEUVをあまり吸収しないため、レジストの中で反応に使われる光子の数がさらに少なくなり、その数のばらつきがパターンの欠陥や線の粗さ(確率論的効果)につながります。露光量を増やせば改善しますが、露光装置の処理の速さが落ちます。
メタルオキサイドレジストの利点と課題
スズなどの金属はEUVの吸収が大きく、薄い膜でも光を効率よく使えます。酸の拡散がないためぼやけが小さく、金属の酸化物はエッチングに強いため、膜を薄くしてもパターンを下の膜に転写でき、細いパターンが倒れるのも防ぎやすくなります。高NA EUVでは焦点の合う範囲が浅く、レジストを薄くする必要があるため、期待が高まっています。課題は、工場に金属を持ち込むことによる汚染の管理と、量産の実績を積み上げることです。液体を塗布する方式のほか、気相で成膜・現像するドライレジストも開発されています。