化学増幅型レジスト(CAR:Chemically Amplified Resist)とは、光が当たると酸を出す物質(光酸発生剤:PAG)を含み、その酸が触媒となって、周りの樹脂の化学反応を次々に引き起こすタイプのフォトレジストです。光1つで1回の反応しか起こさない従来のレジストと違い、生まれた酸が何度も繰り返し働くため、少ない光でパターンを作れます(感度が高い)。1980年代にIBMの伊藤洋らが開発しました。
仕組みは次のとおりです。露光で光が当たった場所では、PAGが分解して酸ができます。ただし、この時点ではまだパターンはできていません。続いて露光後ベーク(PEB)でウェハを温めると、酸が樹脂の中を少し動きながら、樹脂を現像液に溶けにくくしていた保護基を次々に外します。保護基が外れた部分はアルカリの現像液(TMAH)に溶けるようになり、ポジ型のパターンができます。酸は反応で消費されないため、1つの酸が数百回以上の反応を起こします。
KrF(248nm)の露光で、それまでのi線のノボラック系レジストでは感度が足りなくなったことから実用化され、ArF・ArF液浸・EUVの世代でも主流です。弱点は、酸が動く距離の分だけパターンの境目がぼやけることと、空気中のわずかなアミンなどの塩基で酸が打ち消されること(パターンの上がT字形になるTトップ)です。EUVでは光子の数が少ないため、酸のでき方のばらつきが線の粗さや欠陥(確率論的効果)の原因になり、金属酸化物レジストなどの代わりの材料も開発されています。