最終更新 2026-10-19

化学増幅型レジストとは(CAR)

Chemically Amplified Resist (CAR)

化学増幅型レジスト(CAR)とは、光が当たると酸を出す光酸発生剤を含み、その酸が触媒となって樹脂の反応を次々に起こすフォトレジストです。1つの酸が何百回も働くため、少ない光でパターンを作れます。KrF露光から実用化され、ArFやEUVでも主流ですが、酸が動く分のぼやけやEUVでのばらつきが課題です。

目次8項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. 紛らわしい言葉の切り分け
  4. よくある質問
  5. 設備の製造メーカー
  6. 関連用語
  7. 比較・違いを学ぶ
  8. 出典・参考資料

定義・解説

化学増幅型レジスト(CAR:Chemically Amplified Resist)とは、光が当たると酸を出す物質(光酸発生剤:PAG)を含み、その酸が触媒となって、周りの樹脂の化学反応を次々に引き起こすタイプのフォトレジストです。光1つで1回の反応しか起こさない従来のレジストと違い、生まれた酸が何度も繰り返し働くため、少ない光でパターンを作れます(感度が高い)。1980年代にIBMの伊藤洋らが開発しました。

仕組みは次のとおりです。露光で光が当たった場所では、PAGが分解して酸ができます。ただし、この時点ではまだパターンはできていません。続いて露光後ベーク(PEB)でウェハを温めると、酸が樹脂の中を少し動きながら、樹脂を現像液に溶けにくくしていた保護基を次々に外します。保護基が外れた部分はアルカリの現像液(TMAH)に溶けるようになり、ポジ型のパターンができます。酸は反応で消費されないため、1つの酸が数百回以上の反応を起こします。

KrF(248nm)の露光で、それまでのi線のノボラック系レジストでは感度が足りなくなったことから実用化され、ArF・ArF液浸・EUVの世代でも主流です。弱点は、酸が動く距離の分だけパターンの境目がぼやけることと、空気中のわずかなアミンなどの塩基で酸が打ち消されること(パターンの上がT字形になるTトップ)です。EUVでは光子の数が少ないため、酸のでき方のばらつきが線の粗さや欠陥(確率論的効果)の原因になり、金属酸化物レジストなどの代わりの材料も開発されています。

図解

露光で酸ができ、露光後ベークで酸が保護基を外し、連鎖的な反応を経て現像でパターンができる流れ
ネガ型の化学増幅型レジストもあり、反応の種類は材料によって異なる。

紛らわしい言葉の切り分け

化学増幅型レジストとメタルオキサイドレジスト。違いは主成分と反応の仕組みです。化学増幅型は有機の樹脂で、光で生じた酸が触媒となって反応を広げます。メタルオキサイドレジストはスズなどの金属酸化物で、EUVの光をよく吸収し、酸の拡散によるぼやけがなく、エッチングにも強いため、EUVの微細なパターンで期待されています。 比較記事 →

よくある質問(FAQ)

化学増幅型レジストの「増幅」とは何ですか?
光1つで1回の反応しか起こさないのではなく、光で生まれた酸が触媒として何度も繰り返し反応を起こすことを指します。酸は反応しても消費されないため、1つの酸が樹脂の保護基を数百回以上外します。その結果、少ない露光量でも十分な反応が起こり、レジストの感度が大きく上がります。
Tトップとは何ですか?
化学増幅型レジストのパターンの上の部分が溶け残り、断面がT字形になる不良です。露光から露光後ベークまでの間に、空気中のアミンなどの塩基性の物質がレジストの表面に入り込み、表面の酸を打ち消してしまうことが原因です。空気をきれいに保つフィルタや、表面を保護する膜で防ぎます。

設備の製造メーカー

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比較・違いを学ぶ

出典・参考資料

  1. 有機合成化学協会「化学増幅型レジスト(有機合成化学協会誌 49巻5号)」(2026/10/19 確認)
  2. 日本化学会「フォトレジスト(化学と教育 73巻5号)」(2026/10/19 確認)