比較成膜最終更新 2026-10-19

HDP-CVDと流動性CVD(FCVD)の違い

トランジスタを分ける溝(STI)や配線の間のすき間を、空洞を残さずに絶縁膜で埋めることは、半導体の製造の重要な課題です。この「溝埋め」の代表的な方法がHDP-CVDと流動性CVDです。ここでは2つの仕組みの違いと、世代による使い分けを整理します。

結論

違いは、細い溝を空洞なく埋める(ギャップフィル)仕組みです。HDP-CVDは密度の高いプラズマの中で酸化膜を成膜しながら、イオンで溝の入り口の角に付いた膜を削り、入り口をふさがずに底から積み上げます。流動性CVD(FCVD)は、成膜の直後は液体のように流れる膜を作って溝の底まで流し込み、後の熱処理で酸化膜に変えます。HDP-CVDは比較的広い溝を緻密な膜で埋めるのに向き、溝が細く深くなった20nm世代以降のSTIなどでは流動性CVDが主流になりました。

主な違い

HDP-CVDと流動性CVD(FCVD)の観点別比較
観点HDP-CVD流動性CVD(FCVD)
埋める仕組み成膜とイオンによる削りを同時に進める流れる膜を流し込み、後で固める
膜の状態成膜した時点で緻密な酸化膜柔らかい膜を熱処理で酸化膜に変える
得意な溝比較的広い溝、配線の間細く深い高アスペクト比の溝
主な課題高アスペクト比で追いつかない、角の損傷熱処理での膜の収縮、奥と入り口の膜質の差
主な時期1990年代後半から広く使用2010年ごろから微細な世代で採用

通常のCVDでは溝の入り口が先にふさがる

通常のCVDで細い溝を埋めると、溝の入り口の角に膜が厚く付きやすく、底まで埋まる前に入り口がふさがって、中に空洞(ボイドやシーム)が残ります。空洞は、後の工程で薬液が入り込んだり、電気的な不良の原因になったりします。HDP-CVDと流動性CVDは、それぞれ別の方法でこの問題を解決しています。

HDP-CVDは削りながら積む

HDP-CVDでは、基板に電圧をかけてイオンを垂直に引き込み、成膜と同時に、斜めの面になっている溝の入り口の角の膜を削り落とします。成膜と削る量の比率を調整することで、入り口を開けたまま底から順に埋めていきます。緻密で質のよい酸化膜を低い温度で作れますが、溝が深く細くなると削りながら埋めるだけでは追いつかず、削ったときに下の膜を傷めることもあります。

流動性CVDは流して固める

流動性CVDでは、低い温度でシリコン・窒素・水素を含む柔らかい膜を作り、それが毛細管の力などで溝の底まで流れ込みます。その後、オゾンや水蒸気の中で熱処理すると酸化膜に変わります。下から満たすため、高アスペクト比の溝でも空洞を残さずに埋められます。熱処理で膜が縮んで周りの構造に応力がかかることが課題で、熱処理の条件が重要です。

よくある質問

ギャップフィルとは何ですか?
トランジスタの間の溝や配線の間のすき間を、絶縁膜で空洞を残さずに埋めることです。溝が細く深くなるほど、入り口が先にふさがって空洞が残りやすくなるため、HDP-CVDや流動性CVD、塗布型の膜、ALDなど、さまざまな方法が使い分けられています。
HDP-CVDは今は使われていないのですか?
使われなくなったわけではありません。最先端のSTIのように細く深い溝では流動性CVDなどが主流になりましたが、比較的広い溝や配線の間の絶縁膜、成熟した世代のプロセスでは、緻密な膜を作れるHDP-CVDが今も使われています。

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