HDP-CVDと流動性CVD(FCVD)の違い
トランジスタを分ける溝(STI)や配線の間のすき間を、空洞を残さずに絶縁膜で埋めることは、半導体の製造の重要な課題です。この「溝埋め」の代表的な方法がHDP-CVDと流動性CVDです。ここでは2つの仕組みの違いと、世代による使い分けを整理します。
結論
違いは、細い溝を空洞なく埋める(ギャップフィル)仕組みです。HDP-CVDは密度の高いプラズマの中で酸化膜を成膜しながら、イオンで溝の入り口の角に付いた膜を削り、入り口をふさがずに底から積み上げます。流動性CVD(FCVD)は、成膜の直後は液体のように流れる膜を作って溝の底まで流し込み、後の熱処理で酸化膜に変えます。HDP-CVDは比較的広い溝を緻密な膜で埋めるのに向き、溝が細く深くなった20nm世代以降のSTIなどでは流動性CVDが主流になりました。
主な違い
| 観点 | HDP-CVD | 流動性CVD(FCVD) |
|---|---|---|
| 埋める仕組み | 成膜とイオンによる削りを同時に進める | 流れる膜を流し込み、後で固める |
| 膜の状態 | 成膜した時点で緻密な酸化膜 | 柔らかい膜を熱処理で酸化膜に変える |
| 得意な溝 | 比較的広い溝、配線の間 | 細く深い高アスペクト比の溝 |
| 主な課題 | 高アスペクト比で追いつかない、角の損傷 | 熱処理での膜の収縮、奥と入り口の膜質の差 |
| 主な時期 | 1990年代後半から広く使用 | 2010年ごろから微細な世代で採用 |
通常のCVDでは溝の入り口が先にふさがる
通常のCVDで細い溝を埋めると、溝の入り口の角に膜が厚く付きやすく、底まで埋まる前に入り口がふさがって、中に空洞(ボイドやシーム)が残ります。空洞は、後の工程で薬液が入り込んだり、電気的な不良の原因になったりします。HDP-CVDと流動性CVDは、それぞれ別の方法でこの問題を解決しています。
HDP-CVDは削りながら積む
HDP-CVDでは、基板に電圧をかけてイオンを垂直に引き込み、成膜と同時に、斜めの面になっている溝の入り口の角の膜を削り落とします。成膜と削る量の比率を調整することで、入り口を開けたまま底から順に埋めていきます。緻密で質のよい酸化膜を低い温度で作れますが、溝が深く細くなると削りながら埋めるだけでは追いつかず、削ったときに下の膜を傷めることもあります。
流動性CVDは流して固める
流動性CVDでは、低い温度でシリコン・窒素・水素を含む柔らかい膜を作り、それが毛細管の力などで溝の底まで流れ込みます。その後、オゾンや水蒸気の中で熱処理すると酸化膜に変わります。下から満たすため、高アスペクト比の溝でも空洞を残さずに埋められます。熱処理で膜が縮んで周りの構造に応力がかかることが課題で、熱処理の条件が重要です。