流動性CVD(FCVD:Flowable CVD)とは、成膜の直後には液体のように流れる性質を持つ膜を作り、それを細く深い溝の底まで流し込んでから、熱処理で固い酸化膜に変える成膜方法です。溝の形に沿って膜が付く通常のCVDと違い、すき間に下から満たしていくため、高いアスペクト比の溝でも空洞(ボイドやシーム)を残さずに埋められます。2010年ごろから、20nm世代以降のSTIなどで使われるようになりました。
一般的な方法では、シリコンと窒素を含む原料と、離れた場所のプラズマで作った活性なガスを、低い温度の基板の上で反応させます。すると、シリコン・窒素・水素を含む、まだ固まっていない柔らかい膜ができ、毛細管の力などで溝の中に流れ込みます。その後、オゾンや水蒸気を含む雰囲気で熱処理(キュア)すると、窒素や水素が抜けて酸素と置き換わり、酸化膜(SiO2)に変わります。
FinFETのフィンの間、3D NANDの深い溝、DRAMの細いパターンなど、溝が細く深くなるほどFCVDの役割は大きくなっています。課題は、熱処理で膜が縮むことと、溝の奥と入り口で膜の質がそろいにくいことです。縮むと周りの構造に応力がかかり、細いパターンが倒れたり曲がったりする原因になるため、熱処理の条件の最適化が重要です。塗布して焼き固めるSOG(スピンオングラス)と似た考え方を、CVDで実現した方法といえます。