自然酸化膜とは、シリコン表面が大気中の酸素や水分に触れることで自然に成長する、厚さ1〜2nm程度の薄いSiO₂膜です。意図して作った膜ではないため膜質は不均一で、金属や有機物を巻き込んでいることも多く、そのまま次の工程へ進めば界面の電気特性や膜の密着性を損ないます。
問題になるのは、清浄なシリコン界面が必要な工程です。ゲート絶縁膜の形成前、エピタキシャル成長前、コンタクトホールでのシリサイド形成前、金属配線との接続部などでは、自然酸化膜が残っていると接触抵抗の上昇や界面準位の増加、エピ層の結晶欠陥を招きます。そのため直前に必ず除去工程(プレクリーン)が入ります。
除去にはDHF洗浄(希フッ酸)が標準的に使われます。HFはSiO₂を選択的に溶かし、処理後のシリコン表面はSi-H結合で終端された疎水性の状態になります。この水素終端は一時的に再酸化を遅らせる効果を持ちますが、大気に晒せば数十分から数時間で再び酸化が始まるため、時間との勝負になります。
そこで運用面ではキュータイム(工程間の待機時間上限)が設定されます。DHF処理から次工程までの許容時間を超えたウェハは再洗浄に回され、待機中はN₂パージされたFOUPやストッカーで保管して酸素・水分との接触を減らします。搬送系をN₂雰囲気にするEFEMが採用されるのも、この再酸化を抑える目的が大きな比重を占めます。
液体を使えない微細構造では、COR(Chemical Oxide Removal)のようなドライ洗浄が使われます。HF系ガスとNH₃で酸化膜を固体生成物に変え、加熱して昇華させる方式で、Å単位の制御性と、パターン倒壊やウォーターマークが起きないという利点があります。自然酸化膜との付き合い方は、清浄界面を要求するプロセスすべてに共通する基礎課題です。