酸化ガリウムとSiCの違い
シリコンに代わるパワー半導体として、SiCはEVのインバーターなどですでに量産が進んでいます。そのさらに先の材料として注目されているのが酸化ガリウムです。ここでは2つの材料の違いを、物性・基板・デバイスの3つの観点から整理します。
結論
違いはバンドギャップの大きさと、基板の作りやすさ、放熱のしやすさです。酸化ガリウム(Ga2O3)はバンドギャップが約4.8〜4.9eVとSiC(約3.3eV)より大きく、理論上はより高い耐圧と低い損失をめざせます。シリコンと同じように溶かした原料から結晶を作れるため、大きな基板を安く作れる可能性もあります。一方、熱伝導率はSiCの10分の1程度と低く、p型の層を作るのが難しいため、MOSFETの量産で先行するSiCに対し、まだ開発・初期の実用化の段階です。
主な違い
| 観点 | 酸化ガリウム(Ga2O3) | SiC(炭化ケイ素) |
|---|---|---|
| バンドギャップ | 約4.8〜4.9eV | 約3.3eV(4H-SiC) |
| 基板の作り方 | 融液成長(EFG法など)が使える | 昇華法(溶かせない) |
| 基板のコスト | 安くできる可能性 | 高い(成長が遅く欠陥も入りやすい) |
| 熱伝導率 | 低い(SiCの10分の1程度) | 高い(シリコンの約3倍) |
| p型の層 | 作るのが非常に難しい | 作れる |
| デバイスの状況 | ダイオードから実用化、トランジスタは開発中 | MOSFET・ダイオードが量産中 |
| 主な用途の方向 | 高耐圧・低コストの電源など | EV、鉄道、太陽光、産業用 |
バンドギャップが大きいほど耐圧を上げやすい
パワー半導体は、オフのときに高い電圧に耐え、オンのときに抵抗を小さくすることが求められます。バンドギャップが大きい材料ほど、壊れずに耐えられる電界(絶縁破壊電界)が大きくなり、同じ耐圧を薄い層で実現できるため、オン抵抗を小さくできます。酸化ガリウムはSiCやGaNより大きいバンドギャップを持つため、理論上はさらに高い性能をめざせる材料です。
基板のコストで酸化ガリウムに期待がかかる
SiCは常圧では溶けずに昇華するため、高温で原料を昇華させて結晶を成長させる方法で作ります。成長が遅く、欠陥も入りやすいため、基板は高価です。β型の酸化ガリウムは溶かした原料から結晶を引き上げられるため、シリコンのように大きな結晶を比較的速く作れる可能性があり、基板のコストを大きく下げられると期待されています。
放熱とp型が酸化ガリウムの課題
酸化ガリウムは熱を伝えにくく、チップの熱がこもりやすいため、チップを薄くして放熱性の高い基板に貼り合わせるなどの工夫が必要です。また、p型の層を作るのが非常に難しいため、pn接合を使うMOSFETのような構造が作りにくく、まずはショットキーバリアダイオードや、n型だけで作れるトランジスタの開発が進んでいます。SiCはこうした点で先行しており、当面は棲み分けが進むと見られています。