HASTとPCT(プレッシャークッカー試験)の違い

樹脂で封止した半導体パッケージは、長い時間をかけて水分を吸い込みます。その水分による不良を、実際の何年分も待たずに確かめるのが耐湿性の加速試験です。代表的なHASTとPCTは名前も条件も似ていますが、狙いと使い分けがあります。

最終更新: 2026-10-03

結論:HAST(高加速温度湿度ストレス試験)とPCT(プレッシャークッカー試験)の違いは?

どちらも半導体パッケージの耐湿性を短時間で評価する加速試験ですが、条件が違います。PCTは121℃・湿度100%の飽和水蒸気(約2気圧)で、通常は電圧をかけずに試験し、水分の浸入による腐食や剥離を調べます。HASTは130℃・85%などの不飽和の加圧条件で、通常は電圧をかけながら試験し、85℃・85%の高温高湿バイアス試験(THB)を大幅に短縮できます。飽和で結露しやすいPCTより実使用に近い不良を加速できるため、近年は電圧をかけないHAST(uHAST)がPCTの代わりに使われることもあります。

比較表

HAST(高加速温度湿度ストレス試験)PCT(プレッシャークッカー試験)
HAST(高加速温度湿度ストレス試験)とPCT(プレッシャークッカー試験)の観点別比較
観点HAST(高加速温度湿度ストレス試験)PCT(プレッシャークッカー試験)
代表的な条件130℃・85%RH(または110℃・85%RH)121℃・100%RH(飽和水蒸気)
圧力約2.3気圧(不飽和の加圧)約2気圧(飽和水蒸気圧)
電圧(バイアス)かける(バイアスHAST)/かけない(uHAST)通常かけない
主な規格JESD22-A110(バイアス)、A118(無バイアス)JESD22-A102
試験時間の目安96〜264時間程度数十〜数百時間
加速する不良電圧のかかった配線・パッドの電気化学的な腐食水分の浸入による腐食・界面の剥離
注意点装置が高価、条件の管理が厳密結露しやすく、実使用と異なる不良が出ることがある

基準となるのは85℃・85%のTHB

耐湿性の試験の基本は、85℃・湿度85%で電圧をかけながら1,000時間程度さらす高温高湿バイアス試験(THB)です。しかし約6週間かかるため、開発や品質の確認には時間がかかりすぎます。HASTは温度を130℃程度に上げ、圧力をかけることで湿度を保ったまま水分の浸入と反応を加速し、THBの1,000時間を100時間前後に短縮します。電圧をかけるのは、配線の間の電界によって水分中のイオンが動き、陽極側の金属が溶ける電気化学的な腐食を再現するためです。

PCTは「水を浴びせる」に近い試験

PCTは圧力鍋と同じく、121℃の飽和水蒸気の中に置く試験で、湿度は100%です。条件の管理が比較的簡単で、樹脂やチップの保護膜の耐湿性の比較、封止樹脂とリードフレームの界面の剥がれの評価などに古くから使われてきました。一方、飽和状態では表面に結露が起きやすく、実際の使用ではまず起きない水滴による不良が出ることがあり、また電圧をかけないため電気化学的な腐食は加速されにくいという限界があります。

使い分けの考え方

製品の信頼性の認定では、電圧をかけたHAST(またはTHB)で電気化学的な腐食を評価し、電圧をかけない耐湿試験として、PCTか、不飽和で結露の起きにくいuHASTを組み合わせるのが一般的です。顧客や業界の規格(車載のAEC-Q100など)が指定する試験を選ぶことも多く、近年はPCTの代わりにuHASTが指定される例が増えています。どの試験でも、試験の前に吸湿とはんだ付けの熱を加える前処理(プリコンディショニング)を行い、実装の工程を経た状態で評価します。

関連ページ

HAST(用語)→
PCT(プレッシャークッカー試験)(用語)→
コロージョン(腐食)(用語)→
MSL(吸湿感度レベル)(用語)→
HTOL(用語)→
HTOLとバーンインの違い(比較)→

よくある質問

HASTは何時間でTHBの1,000時間に相当しますか?▾
一般に、130℃・85%のHASTの96時間が、85℃・85%のTHBの1,000時間におおむね相当するとされ、110℃・85%では264時間が目安です。ただし加速の度合いは材料や不良の仕組みによって変わるため、あくまで目安として扱います。
uHASTとPCTはどう違いますか?▾
どちらも電圧をかけない耐湿試験ですが、PCTは湿度100%の飽和水蒸気、uHASTは湿度85%程度の不飽和の条件です。uHASTは結露が起きにくく、実使用に近い不良を加速できるため、PCTの代わりに使われることが増えています。

関連する比較記事

テスト

HTOLとバーンインの違い

読む →
テスト

ウェハテストと最終テストの違い(半導体テスト工程比較)

読む →
テスト

ATPGとBISTの違い(テストパターンをどこで作るか)

読む →
洗浄

DHF(希フッ酸)とBHF(バッファードフッ酸)の違い

読む →
洗浄

SC1(APM)とSC2(HPM)の違い

読む →
← 比較記事一覧に戻る