結論:HAST(高加速温度湿度ストレス試験)とPCT(プレッシャークッカー試験)の違いは?
どちらも半導体パッケージの耐湿性を短時間で評価する加速試験ですが、条件が違います。PCTは121℃・湿度100%の飽和水蒸気(約2気圧)で、通常は電圧をかけずに試験し、水分の浸入による腐食や剥離を調べます。HASTは130℃・85%などの不飽和の加圧条件で、通常は電圧をかけながら試験し、85℃・85%の高温高湿バイアス試験(THB)を大幅に短縮できます。飽和で結露しやすいPCTより実使用に近い不良を加速できるため、近年は電圧をかけないHAST(uHAST)がPCTの代わりに使われることもあります。
比較表
| 観点 | HAST(高加速温度湿度ストレス試験) | PCT(プレッシャークッカー試験) |
|---|---|---|
| 代表的な条件 | 130℃・85%RH(または110℃・85%RH) | 121℃・100%RH(飽和水蒸気) |
| 圧力 | 約2.3気圧(不飽和の加圧) | 約2気圧(飽和水蒸気圧) |
| 電圧(バイアス) | かける(バイアスHAST)/かけない(uHAST) | 通常かけない |
| 主な規格 | JESD22-A110(バイアス)、A118(無バイアス) | JESD22-A102 |
| 試験時間の目安 | 96〜264時間程度 | 数十〜数百時間 |
| 加速する不良 | 電圧のかかった配線・パッドの電気化学的な腐食 | 水分の浸入による腐食・界面の剥離 |
| 注意点 | 装置が高価、条件の管理が厳密 | 結露しやすく、実使用と異なる不良が出ることがある |
基準となるのは85℃・85%のTHB
耐湿性の試験の基本は、85℃・湿度85%で電圧をかけながら1,000時間程度さらす高温高湿バイアス試験(THB)です。しかし約6週間かかるため、開発や品質の確認には時間がかかりすぎます。HASTは温度を130℃程度に上げ、圧力をかけることで湿度を保ったまま水分の浸入と反応を加速し、THBの1,000時間を100時間前後に短縮します。電圧をかけるのは、配線の間の電界によって水分中のイオンが動き、陽極側の金属が溶ける電気化学的な腐食を再現するためです。
PCTは「水を浴びせる」に近い試験
PCTは圧力鍋と同じく、121℃の飽和水蒸気の中に置く試験で、湿度は100%です。条件の管理が比較的簡単で、樹脂やチップの保護膜の耐湿性の比較、封止樹脂とリードフレームの界面の剥がれの評価などに古くから使われてきました。一方、飽和状態では表面に結露が起きやすく、実際の使用ではまず起きない水滴による不良が出ることがあり、また電圧をかけないため電気化学的な腐食は加速されにくいという限界があります。
使い分けの考え方
製品の信頼性の認定では、電圧をかけたHAST(またはTHB)で電気化学的な腐食を評価し、電圧をかけない耐湿試験として、PCTか、不飽和で結露の起きにくいuHASTを組み合わせるのが一般的です。顧客や業界の規格(車載のAEC-Q100など)が指定する試験を選ぶことも多く、近年はPCTの代わりにuHASTが指定される例が増えています。どの試験でも、試験の前に吸湿とはんだ付けの熱を加える前処理(プリコンディショニング)を行い、実装の工程を経た状態で評価します。