用語ロジックプロセス最終更新 2026-10-09Excel・PDF版

バリスティック伝導とは

Ballistic Transport

バリスティック伝導とは、電子が散乱をほとんど受けずに弾丸のように通り抜ける流れ方で、通り道が平均自由行程より短いときに起こります。抵抗は長さによらず、1本の通り道あたり約12.9kΩの下限に近づきます。現在の微細なトランジスタは準バリスティックな状態で動き、移動度より電子の注入速度が電流を決めます。

目次5項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. よくある質問
  4. 関連用語
  5. 比較・違いを学ぶ

定義・解説

バリスティック伝導とは、電子が散乱(原子の振動や不純物にぶつかって向きを変えること)をほとんど受けずに、弾丸のようにまっすぐ通り抜ける電気の流れ方です。電子が散乱されずに進める平均の距離(平均自由行程)より、通り道(チャネル)のほうが短いときに起こります。

通常の電気伝導は、散乱を何度も繰り返しながら電界に押されて流れる「拡散的な伝導」で、移動度という考え方で説明されます。ところがチャネルが平均自由行程(シリコンの電子で室温数十nm程度)に近づくと、散乱を受けない電子の割合が増え、移動度だけでは電流を説明できなくなります。完全にバリスティックな細線では、抵抗は長さによらず、1本の通り道あたり約12.9kΩ(量子化コンダクタンス 2e²/h の逆数)という下限の値に近づきます。

現在の微細なトランジスタは、拡散的な伝導とバリスティック伝導の中間の「準バリスティック」な状態で動いています。この領域では、ソース側からチャネルに電子を送り込む速さ(注入速度)と、ソース近くでの散乱が電流を決めるため、移動度の向上より、注入速度を上げるひずみや材料、接触抵抗の低減が重要になります。カーボンナノチューブでは、μm級の長さでもバリスティック伝導が観測されています。

図解

拡散的な伝導とバリスティック伝導の条件・電子の動き・抵抗の比較
シリコンの電子の平均自由行程は、室温で数十nm程度。

よくある質問(FAQ)

バリスティック伝導なら抵抗はゼロになりますか?
ゼロにはなりません。散乱がなくても、細い通り道と電極のつなぎ目で抵抗が生じ、1本の通り道あたり約12.9kΩ(量子化コンダクタンスの逆数)が下限になります。超伝導のように抵抗がゼロになるのとは別の現象です。
最新のトランジスタはバリスティックに動いていますか?
完全なバリスティックではなく、一部の電子が散乱を受ける準バリスティックな状態です。チャネル長が平均自由行程に近いため、ソース付近での散乱と電子の注入速度が電流を左右します。そのため、ひずみや材料、接触抵抗の改善が性能向上の鍵になります。

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