マクスウェル・ボルツマン分布とは、熱平衡の気体分子の速さ(エネルギー)の分布で、温度が高いほど速い側に広がります。真空中で表面にぶつかる分子の数やCVDの原料の供給、プラズマの電子エネルギーの近似に使われます。半導体の物性では、フェルミ・ディラック分布の近似としてキャリア濃度の計算に使われます。
目次6項目
- 定義・解説
- 図解
- よくある質問
- 関連用語
- 比較・違いを学ぶ
- 出典・参考資料
定義・解説
マクスウェル・ボルツマン分布とは、熱平衡にある気体の分子が、どの速さ(エネルギー)でどれだけの割合で動いているかを表す分布です。温度が高いほど分布は速い側へ広がり、平均の速さが上がります。室温の窒素分子の平均の速さは約470m/sです。
半導体製造では、真空やガスの振る舞いを考えるときの基本になります。壁やウェハの表面に単位時間にぶつかる分子の数、ガスが細い管を流れる速さ、CVDで表面に届く原料の量などは、この分布から計算されます。プラズマの中の電子のエネルギーも、まずはこの形(マクスウェル分布)で近似し、電子温度で表しますが、低い圧力ではこの形から外れることも多く、実際の分布を測って補正します。
半導体の物性では、電子の分布を表すフェルミ・ディラック分布の近似として登場します。フェルミ準位がバンドの端から熱エネルギー(kT)の数倍以上離れているとき(縮退していない半導体)、電子の分布はボルツマン分布で近似でき、キャリア濃度は n=Nc·exp(−(Ec−EF)/kT) という簡単な形で計算できます。拡散や反応の速さが温度とともに指数関数的に増える(アレニウスの式)のも、この分布の裾にある高いエネルギーの粒子の割合が増えるためです。
図解
k はボルツマン定数、T は絶対温度。よくある質問(FAQ)
フェルミ・ディラック分布との違いは何ですか?
フェルミ・ディラック分布は、1つの状態に電子が1個しか入れないという制約(パウリの排他原理)を含んだ正確な分布です。マクスウェル・ボルツマン分布はこの制約を無視した近似で、粒子がまばらで状態がほとんど空いているときに成り立ちます。ドーピングが濃すぎない半導体の電子はこの近似で扱えます。
反応の速さが温度で急に変わるのはなぜですか?
マクスウェル・ボルツマン分布の高エネルギー側の裾にある、反応を起こせるだけのエネルギーを持つ粒子の割合が、温度とともに指数関数的に増えるからです。これが、拡散や酸化、CVDの速さが温度に強く依存するアレニウスの式の背景になっています。
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