真空(Vacuum)とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態のことです。日本産業規格(JIS Z 8126)でもこのように定義されており、分子がまったく存在しない状態を指すわけではありません。半導体製造では、成膜(スパッタ・CVD・ALD)、ドライエッチング、イオン注入、EUV露光、電子顕微鏡による計測など、多くの工程が真空に保たれた容器(チャンバー)の中で行われます。
真空は圧力によって、低真空(100kPa〜100Pa)、中真空(100Pa〜0.1Pa)、高真空(0.1Pa〜10⁻⁵Pa)、超高真空(10⁻⁵Pa以下)に区分されます。圧力が下がるほど、気体分子が他の分子とぶつかるまでに進む平均距離(平均自由行程)が長くなり、室温の空気では1Paで約7mm、10⁻⁴Paでは約70mに達します。圧力の単位にはPa(パスカル)のほか、装置の現場ではTorr(1Torr≒133Pa)やmbarも使われます。
半導体製造で真空が必要な理由は大きく3つあります。1つ目は、空気中の酸素・水分・パーティクルによる汚染や酸化を防ぐこと。2つ目は、スパッタされた原子やイオン、電子線を途中で気体分子にぶつけずに基板まで届けること。3つ目は、数Pa〜数十Pa程度の減圧下でプラズマを安定して発生させることです。真空は、大気圧からドライポンプで粗引きし、ターボ分子ポンプやクライオポンプで高真空まで引いて作ります。圧力はピラニ真空計・隔膜真空計・電離真空計などを使い分けて測定し、ウェハはロードロック室を経由して大気と真空の間を出し入れします。