レーザースライシングとは、インゴット内部の所定の深さにレーザーで改質層(脆化した層)を作り、そこを起点として薄く剥ぎ取ることでウェハを切り出す技術です。ワイヤーソーのように材料を削り取らないため、切り代(カーフロス)をほぼゼロに近づけられる点が最大の特長です。
原理は、透過性のある波長のレーザーを対物レンズで材料内部に集光し、焦点付近だけを多光子吸収によって局所的に改質させるというものです。この改質層を面状に走査して形成し、熱応力や機械的な力を加えることで、改質面に沿って結晶を分離します。後工程のステルスダイシングと同じ考え方を、インゴットのスライスに応用したものと言えます。
この技術が最も期待されているのがSiCです。SiCはダイヤモンドに次ぐ硬度を持つためワイヤーソーでの切断に時間がかかり、切り代と研磨取り代を合わせた材料ロスがインゴットの半分近くに達します。レーザースライシングを使えば、1本のインゴットから取れる枚数を大幅に増やせるため、SiCデバイスのコスト構造を変えうる技術として各社が開発を競っています。
課題は、剥離面の品質と量産性です。分離直後の面には改質層の残渣と凹凸が残るため、研削・研磨による除去が必要で、その取り代が大きければカーフ削減の効果が相殺されます。また、改質層の形成はレーザーの走査で行うため、大口径ウェハでは1枚あたりの処理時間がスループットの制約になります。
同じ「レーザーで剥がす」技術は、GaN系LEDの製造でも使われています。サファイア基板上に成長させたGaN層を、サファイア側からレーザーを照射して界面で分解・剥離するレーザーリフトオフ(LLO)で、成長基板から素子層だけを取り出します。装置は日本の加工機メーカーやレーザー光源メーカーが供給しています。