寄生抽出(PEX:Parasitic Extraction、RC抽出)とは、レイアウトの配線形状から、配線が持つ抵抗(R)や、配線同士・配線と基板の間の容量(C)といった寄生成分を計算して取り出す工程です。回路図には描かれていないこれらの成分が信号の遅延・消費電力・ノイズを左右するため、抽出した値を静的タイミング解析(STA)や回路シミュレーションに渡して、実物に近い条件で性能を確認します。
抽出は、PDKに含まれる技術ファイルに記述された各配線層の厚さ・幅・誘電率などのプロセス情報を用いて行われます。精度と速度のトレードオフから、あらかじめ計算した配線パターンのテーブルを参照するルールベース抽出が大規模デジタル回路で使われ、高精度が求められるアナログ回路やクリティカルな経路では電磁界を直接解くフィールドソルバーが使われます。結果はSPEFやDSPFといった標準形式のファイルで出力されます。代表的なツールにSynopsys StarRC、Cadence Quantus、Siemens EDA Calibre xACTがあります。
寄生抽出の重要性は微細化とともに増しています。配線が細くなると断面積が減って抵抗が上がり、配線間隔が狭まると隣接配線との結合容量が増えます。7nm以降では配線のRC遅延がトランジスタ自体の遅延を上回る経路も多く、寄生成分を見誤るとタイミングの見積もりが大きく狂います。配線材料をコバルトやルテニウムに替える検討や、エアギャップ・Low-k膜で容量を下げる取り組みも、この寄生成分を減らすためのものです。
抽出の精度はプロセスのばらつきの扱いにも左右されます。配線の厚さや幅は製造で上下するため、抵抗・容量が最大・最小となるコーナー(Cworst、Cbest、RCworstなど)ごとに抽出してSTAを回します。またCMPで生じる配線膜厚の面内分布は密度に依存するため、ダミーパターンの影響を含めて抽出する必要があり、製造と設計をつなぐ工程の一つになっています。