PDK(Process Design Kit:プロセス設計キット)とは、ファウンドリが特定の製造プロセスで回路を設計するために設計者へ提供するデータ一式です。そのプロセスで作れるトランジスタの電気特性モデル、守るべき設計ルール、検証ツール用のルールファイルなどがまとめられており、ファブレス企業はPDKを入手して初めてそのプロセス向けの設計に着手できます。いわば製造工程を設計の言葉に翻訳した「プロセスの取扱説明書」です。
PDKの主な構成要素は次のとおりです。(1)SPICEモデル:トランジスタや抵抗・容量の電気特性を表す回路シミュレーション用モデル(FinFET/GAA世代ではBSIM-CMGなど)。(2)デザインルールとDRCデッキ:配線幅・間隔・重なりなどの幾何学的制約と、それを検査するルールファイル。(3)LVSデッキ・寄生抽出(PEX)用の技術ファイル。(4)デバイスのシンボルとパラメトリックセル(Pcell)。(5)レイヤーマップ。標準セルライブラリやI/Oライブラリは、ファウンドリまたはIPベンダーが別途提供するのが一般的です。
PDKは製造プロセスの成熟度に合わせて版が上がります。量産前の0.1版や0.5版はモデルやルールが暫定で、1.0版で確定するのが通例です。先端ノードではプロセスと設計を同時に最適化するDTCOが前提となるため、ファウンドリ・EDAベンダー・大口顧客がPDKを共同で作り込み、EDAツール側も各ノードごとに「認証(certification)」を取得します。
PDKは通常、秘密保持契約(NDA)の下でのみ提供され、プロセスの中身を示す機密情報として扱われます。一方で2020年にGoogleとSkyWaterが130nmのオープンPDK「SKY130」を公開して以降、GlobalFoundriesのGF180MCUやIHPのSG13G2など誰でも使えるPDKが増え、大学や個人がMPW(マルチプロジェクトウェハ)を通じてチップを試作する流れが生まれています。