GDSII(GDS2、Graphic Data System II)とは、チップのレイアウトを表現するための業界標準のデータ形式です。各層(レイヤー)の多角形・パス・階層構造(セルの参照)を座標で記述したバイナリファイルで、設計者がファウンドリにチップのレイアウトを引き渡す「テープアウト」の成果物として、またフォトマスク製作の元データとして使われます。1970年代にCalma社のレイアウトシステム用に作られた形式が、そのまま業界標準として定着しました。
GDSIIの基本要素は、層番号とデータ型の組で区別されるレイヤー、そのレイヤー上の図形(多角形のバウンダリ、幅を持つパス、テキスト)、そして図形をまとめたセル(ストラクチャ)とその参照です。同じセルを何度も参照する階層構造を持つため、同一の標準セルやSRAMビットセルを大量に並べるチップでもデータ量を抑えられます。どの層番号がどの製造層に対応するかは、PDKのレイヤーマップで定義されます。
GDSIIには古い形式ゆえの制約があります。データを圧縮する仕組みがなく、数値表現にも制限があるため、先端チップではファイルが数百GBに達することがあります。そこで2004年にSEMIが後継形式としてOASIS(SEMI P39)を標準化しました。OASISは繰り返し図形の表現や圧縮に優れ、同じデータを数分の1〜10分の1程度に小さくできるため、マスクデータの処理ではOASISが主流になりつつあります。
テープアウトで受け取ったGDSII/OASISのデータは、ファウンドリ側でマスクデータ処理(MDP)にかけられます。DRCの最終確認、ダミーパターンの挿入、光近接効果補正(OPC)による図形の補正、描画装置向けの図形分割(フラクチャリング)を経て、電子ビーム描画装置でフォトマスクに描かれます。OPC後のデータは元のレイアウトより何倍も大きくなるため、マスクデータ処理そのものが大規模な計算になっています。