MPW(Multi-Project Wafer:マルチプロジェクトウェハ)とは、複数の顧客や設計のチップを1組のマスク(1つのレチクル)に相乗りさせ、同じウェハで一緒に製造するサービスです。マスクセットと製造の費用を参加者で分担できるため、1社で専用マスクを作る場合に比べて試作費用を大幅に抑えられます。定期的に運行する便になぞらえて「シャトル」とも呼ばれ、ファウンドリや仲介機関があらかじめ決めた日程で参加者を募ります。
MPWの主な用途は、量産前の試作・評価、IPブロックの動作実証、大学や研究機関の研究・教育、スタートアップの初期製品開発です。代表的なサービスに、TSMCのCyberShuttle、欧州の大学・研究機関向け仲介機関Europractice、米国のMOSISなどがあります。先端ノードの専用マスクセットは数十億円規模になりうるため、MPWは中小企業や研究者が先端プロセスに触れるほぼ唯一の手段になっています。
MPWには制約もあります。チップの面積は参加枠(数mm角など)の範囲に限られ、受け取れるチップの数も数十〜数百個程度と少なく、量産にはそのまま使えません。また日程がファウンドリ側で決まっているため、締め切りに設計を間に合わせる必要があります。試作で動作が確認できたら、専用マスクを作って量産に移行するのが一般的な流れです。
近年はオープンPDKとオープンソースのEDAツールの普及により、MPWの裾野が広がっています。SkyWaterの130nmプロセスなどでは、無償または低価格のシャトルを通じて個人や学生がチップを設計・製造できるようになりました。日本でも大学の設計教育や半導体人材育成の取り組みとして、MPWを使った試作機会を提供する動きが広がっています。