最終更新 2026-10-19

PAIとは(プリアモルファス化注入)

Pre-Amorphization Implant (PAI)

PAI(プリアモルファス化注入)とは、ドーパント注入の前にゲルマニウムなど中性の重いイオンを打ち込み、表面層を意図的に非晶質にしておく前処理です。結晶軸そのものを消すためチャネリングが原理的に起こらず、アニール時の固相エピタキシャル成長(SPE)で低温でも高い活性化率が得られます。代償として境界にEOR欠陥が残るため、非晶質層は接合より深くする設計が必要です。

目次7項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. よくある質問
  4. 設備の製造メーカー
  5. 関連用語
  6. 比較・違いを学ぶ
  7. 出典・参考資料

定義・解説

PAI(Pre-Amorphization Implant:プリアモルファス化注入)とは、ドーパントを注入する前に、ゲルマニウム(Ge)やシリコン(Si)といった電気的に中性の重いイオンを打ち込み、表面層を意図的に非晶質(アモルファス)にしておく前処理です。目的は、後続のドーパント注入でチャネリングを起こさせないことと、活性化率を上げることにあります。

チャネリングは結晶軸に沿った隙間をイオンが通り抜ける現象なので、そもそも結晶構造を壊してしまえば発生しません。PAIによって表面が非晶質化していれば、続けて注入するボロンなどは深さ方向に素直なガウス分布を描き、浅く急峻な接合プロファイルが得られます。チルト角に頼るよりも確実で、高アスペクト比構造でシャドウイングを避けたい場合にも有利です。

活性化の面でも効果があります。非晶質化した層はアニール時にSPE(Solid Phase Epitaxy:固相エピタキシャル成長)によって、下地の結晶を種として低温で結晶に戻ります。この再結晶化の過程でドーパント原子が格子位置に取り込まれるため、通常より低い温度で高い活性化率が得られ、熱バジェットの削減につながります。

一方でPAIには代償があります。非晶質層と下地結晶の境界付近には格子間シリコンが過剰に集まり、アニール後もEOR(End of Range)欠陥として転位ループの形で残ります。この欠陥層が接合の空乏層にかかると接合リーク電流の原因になるため、非晶質層の深さを接合より十分深くする(欠陥を空乏層の外に置く)設計が必要です。

先端ロジックの浅い接合形成では、PAI・ドーパント注入・スパイクアニールやフラッシュ/レーザアニールを組み合わせた一連のレシピが標準になっています。Geを使うのは、シリコンと同族で汚染にならず、重くて効率よく非晶質化できるためです。

図解

PAI(プリアモルファス化注入)の手順(Ge注入・非晶質化・ドーパント注入・固相エピ成長)
チャネリング対策として、ウェハを傾ける方法と並ぶ代表的な手段。

この用語を扱う職種

前工程(ウェハプロセス)イオン注入・熱処理エンジニア

よくある質問(FAQ)

PAIにゲルマニウムを使うのはなぜですか?
シリコンと同じ14族で電気的に中性なため汚染にならず、かつ質量が重いので効率よく結晶を破壊して非晶質化できるからです。ドーパントとして働かない元素を選ぶ点が重要で、シリコン自身を打ち込む場合もあります。
PAIで活性化率が上がるのはなぜですか?
非晶質化した層はアニール時に下地結晶を種として固相エピタキシャル成長(SPE)で再結晶化し、その過程でドーパント原子が格子位置に取り込まれるためです。通常より低い温度で高い活性化率が得られ、熱バジェットの削減にもつながります。
EOR欠陥とは何ですか?
End of Range 欠陥のことで、非晶質層と下地結晶の境界付近に格子間シリコンが集まってできる転位ループです。アニール後も残るため、この欠陥層が接合の空乏層にかかると接合リーク電流の原因になります。非晶質層を接合より深くして欠陥を空乏層の外に置く設計が必要です。

設備の製造メーカー

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出典・参考資料

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