PAI(Pre-Amorphization Implant:プリアモルファス化注入)とは、ドーパントを注入する前に、ゲルマニウム(Ge)やシリコン(Si)といった電気的に中性の重いイオンを打ち込み、表面層を意図的に非晶質(アモルファス)にしておく前処理です。目的は、後続のドーパント注入でチャネリングを起こさせないことと、活性化率を上げることにあります。
チャネリングは結晶軸に沿った隙間をイオンが通り抜ける現象なので、そもそも結晶構造を壊してしまえば発生しません。PAIによって表面が非晶質化していれば、続けて注入するボロンなどは深さ方向に素直なガウス分布を描き、浅く急峻な接合プロファイルが得られます。チルト角に頼るよりも確実で、高アスペクト比構造でシャドウイングを避けたい場合にも有利です。
活性化の面でも効果があります。非晶質化した層はアニール時にSPE(Solid Phase Epitaxy:固相エピタキシャル成長)によって、下地の結晶を種として低温で結晶に戻ります。この再結晶化の過程でドーパント原子が格子位置に取り込まれるため、通常より低い温度で高い活性化率が得られ、熱バジェットの削減につながります。
一方でPAIには代償があります。非晶質層と下地結晶の境界付近には格子間シリコンが過剰に集まり、アニール後もEOR(End of Range)欠陥として転位ループの形で残ります。この欠陥層が接合の空乏層にかかると接合リーク電流の原因になるため、非晶質層の深さを接合より十分深くする(欠陥を空乏層の外に置く)設計が必要です。
先端ロジックの浅い接合形成では、PAI・ドーパント注入・スパイクアニールやフラッシュ/レーザアニールを組み合わせた一連のレシピが標準になっています。Geを使うのは、シリコンと同族で汚染にならず、重くて効率よく非晶質化できるためです。