半導体製造における熱処理(Thermal Treatment)とは、ウェハを高温(200〜1200℃)に加熱して材料特性や構造を変化させる工程の総称です。イオン注入後のダメージ回復・不純物活性化(アニール)、ゲート酸化膜形成(熱酸化)、不純物拡散、金属シリサイド形成(シリサイデーション)、薄膜の緻密化・改質など、前工程の多くのステップで熱処理が使われています。
熱処理装置は処理方式によって大きく3種類に分けられます。①バッチ式縦型炉(Batch Vertical Furnace)は100〜150枚のウェハを一度に処理でき、低温酸化・窒化・アニール・LP-CVDなどに使われます。②枚葉式RTP(Rapid Thermal Processing)は1枚ずつ高強度ランプで数秒〜数十秒で急速加熱・急速冷却し、浅い接合形成・コバルト/ニッケルシリサイド形成に適します。③フラッシュアニール・レーザースパイクアニールはミリ秒以下の超短時間で表面のみを局所加熱し、不純物の再拡散を最小化しながら活性化する最先端技術です。
熱処理の品質を決める主要パラメータは「温度均一性(Thermal Uniformity)」「昇降温速度(Ramp Rate)」「処理雰囲気(酸化・窒素・アルゴン・水素)」「処理時間(Thermal Budget)」の4つです。先端プロセスでは「サーマルバジェット(熱履歴の積算)」の最小化が求められ、過剰な熱処理による不純物再分布・酸化・膜応力変化が特性劣化につながるため、温度・時間管理が極めて重要です。
市場は Applied Materials(RTP分野トップ)、国際電気(Kokusai Electric、バッチ炉分野トップ)、東京エレクトロン(フルラインアップ)、Mattson Technology、SCREENホールディングスなどが競合しています。国際電気はバッチ式縦型炉・LP-CVD炉で世界市場シェア約30%を持ち、特にNAND/DRAMメモリ製造での高生産性が評価されています。Applied MaterialsはRTPとフラッシュアニール(Millisecond Anneal)で先端ロジック市場をリードしています。
次世代デバイス(GAA、CFET、3D-NAND積層数増加)では、従来の熱処理技術では対応しきれない超低サーマルバジェット要求が強まっています。マイクロ波アニール(Microwave Anneal)や紫外線(UV)キュア処理など新方式の研究開発も進んでおり、熱処理は装置技術と材料技術が交差する重要な開発フロンティアとなっています。