拡散係数一覧(シリコン中のドーパント)
最終更新:2026-10-03
要点
シリコン中のドーパントの拡散係数は、D=D₀×exp(−Ea/kT)で温度に強く依存し、1000℃ではホウ素・リンが約1×10⁻¹⁴cm²/s、ヒ素は約3×10⁻¹⁵cm²/s、アンチモンは約8×10⁻¹⁶cm²/sです。温度が100℃上がると拡散係数は約10倍になり、1000℃・1時間でのホウ素の拡散長は約0.07μmです。
シリコン中のドーパントの拡散係数
| 元素 | 型 | D₀(cm²/s) | Ea(eV) | 900℃ | 1000℃ | 1100℃ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| B(ホウ素) | P型 | 0.76 | 3.46 | 1.0×10⁻¹⁵ | 1.5×10⁻¹⁴ | 1.5×10⁻¹³ |
| Al(アルミニウム) | P型 | 1.39 | 3.41 | 3.1×10⁻¹⁵ | 4.4×10⁻¹⁴ | 4.2×10⁻¹³ |
| Ga(ガリウム) | P型 | 0.37 | 3.39 | 1.0×10⁻¹⁵ | 1.4×10⁻¹⁴ | 1.3×10⁻¹³ |
| In(インジウム) | P型 | 0.79 | 3.63 | 2.0×10⁻¹⁶ | 3.3×10⁻¹⁵ | 3.7×10⁻¹⁴ |
| P(リン) | N型 | 3.85 | 3.66 | 7.3×10⁻¹⁶ | 1.2×10⁻¹⁴ | 1.4×10⁻¹³ |
| As(ヒ素) | N型 | 0.32 | 3.56 | 1.6×10⁻¹⁶ | 2.6×10⁻¹⁵ | 2.7×10⁻¹⁴ |
| Sb(アンチモン) | N型 | 0.21 | 3.65 | 4.5×10⁻¹⁷ | 7.6×10⁻¹⁶ | 8.6×10⁻¹⁵ |
※ D₀・Eaは教科書でよく使われる代表値で、文献によって差があります。高濃度では電界や点欠陥の影響で拡散が速くなる(濃度依存拡散)ほか、酸化や注入損傷によって増速拡散が起こるため、実際の工程ではシミュレーションで補正します。
表の読み方
拡散で広がる距離の目安は拡散長√(Dt)です。たとえばホウ素を1000℃で1時間熱処理すると、D≈1.5×10⁻¹⁴cm²/s、t=3,600秒から√(Dt)≈7×10⁻⁶cm、つまり約0.07μmになります。温度を100℃上げると拡散係数は約10倍になるため、拡散長は約3倍に伸びます。ヒ素やアンチモンはホウ素やリンより拡散が遅いため、浅い接合や、熱処理で広がってほしくない埋め込み層に使われます。
拡散の基本はフィックの法則、温度依存の整理はアレニウスプロット、熱処理の積み重ねの管理はサーマルバジェットを参照してください。拡散の濃度分布はドーパント拡散計算ツールで試算できます。銅・鉄・金などの金属は格子の隙間を通って非常に速く拡散するため、ごく微量の汚染でも素子の領域まで届きます。