アンチモン(Antimony、元素記号Sb)は原子番号51の15族(5族)元素で、シリコンではn型半導体を作るドナー(n型ドーパント)として使われます。リンやヒ素と同じくドナーですが、原子がさらに重く(原子量約122)、シリコン中での拡散がとても遅いのが特徴です。
この拡散の遅さを生かした代表的な用途が、エピタキシャルウェハの低抵抗n型基板(n⁺基板)です。パワーMOSFETなどに使うn/n⁺構造のエピタキシャルウェハでは、エピ層を成長させる高温の工程で基板から不純物が染み出すと、エピ層の抵抗が狂ってしまいます。拡散の遅いアンチモンはこの染み出し(オートドーピングや外方拡散)が少ないため、基板のドーパントとして使われます。ただしシリコンに溶け込める量(固溶限)が小さいため、アンチモンを加えた基板の抵抗率は0.01Ω·cm程度が下限で、さらに低い抵抗が必要な場合はヒ素や赤リンを加えた基板が使われます。バイポーラトランジスタやBiCMOSの埋め込み層(n⁺埋め込み層)にもアンチモンが使われてきました。
アンチモンは化合物半導体の構成元素でもあり、InSb(アンチモン化インジウム)は赤外線センサ、GaSbは赤外線デバイスの基板に使われます。相変化メモリでは、Ge₂Sb₂Te₅(GST)などアンチモンを含む合金が記録材料となり、鉛フリーはんだでは高温用のSn-Sb系合金にも使われます。アンチモンは生産が中国に集中しており、2024年に中国が輸出規制の対象としたことで、重要鉱物としての供給リスクが注目されています。