ボロン(Boron、元素記号B、和名ホウ素)は原子番号5の13族(3族)元素で、シリコンに加えるとp型半導体を作るアクセプタとして働く、代表的なp型ドーパントです。シリコン原子の位置に入ったボロンは、周りのシリコンと結合するための電子が1個足りないため、近くから電子を受け取り、その跡に正孔(ホール)を生み出します。シリコンLSIのp型ドーパントとしては、実用上ほぼボロンだけが使われています。
ボロンは原子が軽く小さいため、扱いに特有の難しさがあります。イオン注入では同じエネルギーでも深くまで入り込むため、浅い接合を作るには非常に低いエネルギーで注入するか、分子の重いBF₂⁺(二フッ化ボロン)イオンや、B₁₈H₂₂などのクラスターイオンを使います。また、結晶の原子の並びに沿って奥まで入り込むチャネリングが起こりやすいため、ウェハを傾けたり、ゲルマニウムなどで表面を非晶質化(プリアモルファス化)したりして防ぎます。さらにボロンは拡散しやすく、注入による結晶の損傷があると熱処理の初期に異常に速く拡散する過渡増速拡散(TED)が起こるため、スパイクアニール、フラッシュランプアニール、レーザーアニールなどで短時間に活性化します。
ボロンの供給源には、イオン注入用のBF₃(三フッ化ホウ素)やB₂H₆(ジボラン)、熱拡散用のBBr₃(三臭化ホウ素)や窒化ホウ素の固体ソースがあります。エピタキシャル成長ではジボランを原料ガスに混ぜ、pMOSのソース・ドレインとなるSiGe層に高濃度のボロンを取り込みます(in-situドーピング)。ジボランは毒性と可燃性が高いため、シリンダーキャビネットや除害装置、減圧で安全に供給する容器を使って管理します。このほか、p型のシリコンウェハの多くはボロンを加えて引き上げた結晶から作られ、かつては層間絶縁膜のBPSG(ボロンリンシリケートガラス)にも使われていました。