モリブデン配線(Molybdenum Interconnect)とは、半導体チップの微細配線材料として銅(Cu)に代えてモリブデン(Mo)を採用する次世代配線技術である。銅は配線が10nm幅以下になると電子散乱により比抵抗が急増する「サイズ効果」を示すが、モリブデンは結晶粒界散乱が少なく微細寸法でも比較的低い抵抗率を維持できる特性を持つため、2nm以降の先端ロジックノードの局所配線(M0〜M2層)候補として注目されている。
モリブデンの材料特性として、バルク比抵抗は約5.5μΩ·cm(銅:1.7μΩ·cm)とやや高いが、5nm以下の配線幅では表面・粒界散乱の影響が銅より小さくなり、実効抵抗率でモリブデンが銅を下回るとシミュレーションと実験で確認されている。また融点が高く(2620℃)、高温プロセス耐性に優れるため、コンタクト近傍の熱的安定性が求められる局所配線層に適している。
Applied Materialsはモリブデン配線の成膜技術(PVD・CVD・ALD対応)の開発をリードしており、2023〜2024年の学会発表でインテルやTSMCとの共同研究成果を公表している。IntelはIntel 18A世代の局所配線にMoを採用することを示唆しており、TSMCも2nmノード以降の配線材料としてMo・Ruを検討している。
モリブデン配線形成の課題として、①ドライエッチングによるパターニングの難しさ(揮発性エッチング副生成物の制御)、②バリアメタル選択の最適化、③CMP(化学機械研磨)における選択比と研磨レート制御、が挙げられる。また、配線間の絶縁層(Low-k材料)との熱膨張率差によるストレスマイグレーション耐性の評価も重要な研究課題である。
モリブデン以外の次世代配線材料候補としてルテニウム(Ru)も有力視されている。Ruはバリアレス成膜が可能でバリア体積を削減できるメリットがあり、より上位の配線層(M3〜M5)での採用が検討されている。半導体配線材料の多様化は、材料サプライヤー(エンテグリス、Air Productsなど)のプリカーサー供給体制の整備も促している。