裏面配線技術(Backside Interconnect)とは、半導体チップのシリコン基板裏面(バックサイド)に金属配線を形成する技術の総称です。従来の半導体は、トランジスタ上部の表面(フロントサイド)のみに多層金属配線を形成していましたが、裏面配線を導入することでトランジスタの上下両面から配線を取り出すことが可能となり、配線密度と電源品質を同時に改善できます。
裏面配線には大別して「裏面電源供給(BSPDN)」と「裏面信号配線」の2種類があります。BSPDNはVDD/VSSの電源レールを裏面に移す技術であり、信号配線は表面の配線混雑緩和のためにクリティカルな信号ネットをバックサイドへルーティングするアプローチです。現在主流なのはBSPDNですが、将来的には信号配線の裏面活用も視野に入っています。
製造工程では、ウェハをキャリアに仮接合して裏面を数μm〜数十μm程度に薄化し、ナノスケールのビアを形成して表面のトランジスタ/配線と裏面の電源・信号配線を接続します。この工程には、ダイレクトボンディング(銅−銅、酸化膜−酸化膜)、精密バックグラインド・CMP、ディープビアエッチング(高アスペクト比ドライエッチング)、ALD・PVDによる薄膜堆積などの高度な技術が複合的に求められます。
裏面配線技術は主要ファウンドリ各社が開発競争を展開しています。Intelの「PowerVia」(18Aに採用)、TSMCの「Super Power Rail(SPR)」(A16に採用予定)、Samsungの「バックサイド電源レール」技術がそれぞれロードマップに組み込まれています。また研究機関のimecも裏面配線のプロセス研究を主導しています。
裏面配線技術の普及は、関連する装置・材料サプライヤーに大きな事業機会をもたらします。ウェハ薄化装置(DISCO・東京精密)、ウェハボンディング装置(EV Group・SUSS MicroTec・ムラタ機械)、高アスペクト比エッチング装置(Lam Research・東京エレクトロン)、ALD装置(Applied Materials・ASM International)などの需要拡大が期待されています。