格子定数とは、結晶の中で原子が規則正しく並ぶときの繰り返しの単位(単位格子)の辺の長さのことです。結晶の種類ごとに決まった値を持ち、立方晶では1つの値(a)、GaNやSiCのような六方晶では底面の辺(a)と高さ(c)の2つの値で表します。シリコンはダイヤモンド構造で、格子定数は約0.543nm(5.431Å)です。
主な半導体の格子定数(室温)は、Geが約0.566nm、GaAsが約0.565nm、InPが約0.587nm、六方晶のGaNがa=約0.319nm、4H-SiCがa=約0.308nmです。GaAsとAlAsは格子定数がほぼ同じため、その混晶のAlGaAsはGaAs基板の上にひずみなく成長でき、ヘテロ接合の代表例になりました。InP基板の上では、組成を調整してInPと格子定数をそろえた(格子整合させた)InGaAsやInGaAsPを成長させ、光通信用のレーザーや受光素子を作ります。
基板と成長させる膜の格子定数が違うことを格子不整合と呼び、その割合(格子不整合率)は(膜の格子定数−基板の格子定数)÷基板の格子定数で表します。不整合が小さく膜が薄いうちは、膜が弾性的にひずんで基板に合わせますが、臨界膜厚を超えるとひずみを逃がすためにミスフィット転位が発生し、結晶の品質が低下します。GaNとシリコンの格子不整合は約17%と大きく、Si基板上のGaNではバッファ層で転位や反りを抑えています。一方、SiGeのソース・ドレインでチャネルのシリコンに圧縮ひずみを加えて正孔の移動度を高めるひずみシリコン技術のように、格子定数の差を積極的に利用する例もあります。格子定数はX線回折(XRD)で精密に測定します。