InP(インジウムリン、リン化インジウム)とは、インジウム(In)とリン(P)からなるIII-V族化合物半導体です。バンドギャップは約1.34eVの直接遷移型です。InPの基板の上には、組成を調整して格子定数をそろえたInGaAsやInGaAsPを成長させられ、これらを組み合わせることで、光ファイバーでの損失が小さい波長1.3μm帯と1.55μm帯の光を出したり受けたりできることが、最大の特長です。
主な用途は光通信です。長距離通信やデータセンターの光トランシーバーに使われる半導体レーザー(DFBレーザー、電界吸収型変調器付きレーザー=EML)、受光素子(InGaAsフォトダイオード、APD)、光変調器が、InP基板の上に作られます。生成AI向けデータセンターでは、サーバー間をつなぐ800G・1.6Tの光トランシーバーの需要が急増しており、InPデバイスと基板の需要も大きく伸びています。シリコン上に光回路を作るシリコンフォトニクスでも、シリコンでは発光できないため、光源にはInP系のレーザーを組み合わせます。電子デバイスとしては、100GHzを超える超高周波で動くInP HBTやHEMTが、次世代無線や計測器に使われます。InGaAsは短波赤外(SWIR)のイメージセンサにも使われます。
InPの単結晶はVGF法やLEC法で作られますが、割れやすく欠陥を減らすのが難しいため、ウェハは直径2〜4インチが中心で、6インチ化が進みつつある段階です。GaAsやシリコンに比べて高価で、基板の供給はJX金属や住友電気工業など少数のメーカーに集中しています。原料のインジウムは主に亜鉛の精錬の副産物として得られる希少金属で、重要鉱物の一つに位置付けられています。