転位(dislocation)とは、結晶中で原子の並びのずれが線状に続いている欠陥です。結晶の一部だけが原子1列分すべった状態の境界線にあたり、線欠陥とも呼ばれます。ずれの向きと大きさを表すベクトルをバーガースベクトルと呼び、これが転位線に垂直なものを刃状転位、平行なものをらせん転位、その中間を混合転位と分類します。
金属が柔らかく曲がるのは転位が動きやすいためですが、共有結合でできたシリコンでは、室温で転位はほとんど動きません。しかし高温では動きやすくなり、ウェハに熱応力がかかると{111}面に沿って転位がすべり、増殖します。熱処理中にウェハの縁や支持部から入るこの欠陥をスリップと呼びます。
転位はデバイスにとって有害です。転位の周囲では結合が歪み、バンドギャップ中に準位ができるため、pn接合を貫くとリーク電流の経路になります。さらに金属不純物が転位に集まって析出すると、局所的な短絡を起こすこともあります。そのため、シリコンの単結晶インゴットは転位を含まない無転位結晶として育成されます。
格子定数の異なる材料を積み重ねると、界面に転位が生じます。シリコン上のSiGeやGaN、サファイア上のGaNでは、ずれを解消するためのミスフィット転位と、そこから膜を貫いて表面に達する貫通転位が発生します。GaN-on-Siの貫通転位密度は一般に10⁸〜10⁹ cm⁻²程度と、ほぼ無転位のシリコンとは桁違いで、これを減らすバッファ層の設計が重要です。
SiCでは転位がデバイスの信頼性に直結します。基板やエピ層に含まれるベーサル面転位(BPD)は、通電時に電子と正孔が再結合するエネルギーを受けて積層欠陥へ広がり、オン電圧を経時的に上昇させます(バイポーラ劣化)。このため、エピ成長の初期にBPDを無害な貫通刃状転位へ変換する技術が使われています。転位の観察には、選択エッチングでピットとして浮かび上がらせる方法、X線トポグラフィ、透過電子顕微鏡(TEM)が用いられます。