MRAM(Magnetoresistive Random-Access Memory:磁気抵抗メモリ)とは、磁性体の磁化方向によりデータを記憶する不揮発性メモリです。電源を切ってもデータが保持される不揮発性と、SRAMに近い高速アクセス(10〜50ns)・高書き込み耐久性(10¹²回以上)を兼ね備えており、フラッシュメモリ・DRAMの弱点を補う「ユニバーサルメモリ」候補として注目されています。STT-MRAM(Spin Transfer Torque MRAM)が現在の主流技術で、Samsung・TDK・Everspin・GlobalFoundriesが量産しています。
MRAMの記憶原理は磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)にあります。2枚の強磁性膜(固定層・自由層)と薄いトンネル絶縁膜(MgO)から構成されるMTJセルは、自由層の磁化方向が固定層と平行(低抵抗・「0」)または反平行(高抵抗・「1」)の2状態をとります。STT-MRAMでは書き込み電流のスピン角運動量で磁化方向を反転させ、読み出しは抵抗値の差で行います。
MRAMの用途は組み込みメモリ(eMRAM)と独立メモリの2系統で拡大しています。eMRAMは先端ロジックチップ内のSRAMキャッシュの一部をMRAMで置き換える用途で、GlobalFoundries 22FDX・Samsung SF28などのプロセスに組み込まれています。車載マイコン(ルネサスRH850等)のフラッシュ代替として採用が進んでおり、高温動作・高書き換え耐久性が車載用途に適合します。
SOT-MRAM(Spin-Orbit Torque MRAM)が次世代技術として研究されています。STT-MRAMより書き込み速度が1桁以上速く(<1ns)、書き込み電流も低減できるSOT-MRAMは、L1/L2キャッシュのSRAM代替候補として学術界・産業界で活発に研究中です。IMEC・CEA-Leti・各大学がSOT-MRAM試作に取り組み、量産化の課題(MTJの均一性・SOT材料の最適化)の解決を目指しています。
MRAM市場は2026〜2030年に年率25%超の成長が予測されています。特に車載・産業IoT・エッジAIの組み込みメモリ需要が牽引役です。日本ではTDKとSonyがSTT-MRAM開発で存在感を示しており、日本の材料技術(MgO成膜・スパッタリングターゲット)とMRAMの相性の良さから、国内材料メーカーにも恩恵があります。MRAMの量産にはスパッタリング装置(アルバック・東京エレクトロン・Canon Anelva)・CMP装置・ALD装置が使われます。